『パコマネ わたし、今日から名門野球部の性処理係になります…』レビュー
熱血の定型、いくら使っても飽きない
高校の頃、よく「歓歓文苑」というサイトを見ていた。実態はアダルトサイトのテキスト版みたいなもので、定期的に更新されるエロ小説が載っていた。
そのサイトは俺が大学を卒業するまでしぶとく生き残っていたが、その後は消えた。今に至るまで、二度と復活していない。
あのサイトにはなかなか良い文章がいくつかあって、筆致がかなり上手く、中には想像を掻き立てるものもあった。一番印象に残っているのは女教師の話で、女教師が生徒の成績を上げるために、クラスの落ちこぼれ連中が全員学年トップに入れたら体を差し出す、抱かれてもいいと生徒と約束する話だ。
その小説の描写もなかなか面白くて、教師もいくつもの心理的障壁を突破していく。校長の淫威に屈するかと思いきや、逆に生徒に身を捧げる方を選ぶ。結末はちょっと意外で、むしろハッピーエンドっぽい感じすらあった。
ああ、話がだいぶ逸れた。ただ、物事の定型ってのは時に思いがけない効果を生むものだ。たとえばこの『パコマネ わたし、今日から名門野球部の性処理係になります…』というゲームがそう。

『パコマネ わたし、今日から名門野球部の性処理係になります…』は frill の作品だ。frill って実は Key と同じ親会社の下にいて、まあ有名なところの系列の制作チームではある。ただ作品は全部抜きゲーだが。
frill の古い作品にはなかなか古典的なものもあって、『聖倡女』とか、後の『援交少女』とか。ただその後はパッとしなくなって、あの『彼女がヤリ部に勧誘された』みたいなゲームはかなり雑だった。今回のもタイトルからして大したことない定型だろうと、要は女子生徒が野球部のマネージャーになって肉便器になる話でしょ……と思っていた。
だが、それは大間違いだった。
このゲームは想像以上に気合が入っていて、しかも書かれている内容が……すこぶる真面目なのだ。

ゲームは、ヒロインの伊波咲が入学時に野球部の熱血ぶりに惹かれ、在学中に野球部の女子マネージャーである先輩・栗宮希実に誘われて、新しいマネージャーとして野球部に入り、チームを勝利に導くという話だ。
シナリオは二つのパートに分かれている。一つはヒロインの野球への情熱を描くパート。ヒロインは最初野球について何も分からず、やがてプロのマネージャーになっていくまでの変化が、まあ平稳に描かれている。ヒロインが面接で野球部に入る場面でも真面目に熱血ぶりを見せるし、試合に負けた後の落ち込みもちゃんと書かれている。

もう一つが抜きゲーパートだ……ヒロインは野球部に入ってから、自分が女性だからという理由で、男だらけの部員がエロ本を読んだり、オナニーしたりするのを頻繁に目撃する。最初は恥ずかしがっていたが、先輩の導きでそのうち慣れてしまい、果ては一部の部員のオナニーを手伝い始め、さらに先輩の導きで身を捧げ、元気のない部員に慰めを与えたりするようになる……
しかもこういう展開なのに、ヒロインは肉便器に堕ちるでもなく、部員との間に……ええと……和やかで……愛のある?団結精神を保っている。

つまり、あの部員が元気ないなと思ったらヒロインが行って一発やって、元気になったらまた練習に戻り、試合では良いパフォーマンスを発揮する……というパターンだ。
しかもヒロインは常に先輩に励まされていて、先輩はヒロインにこう言う。女子マネージャーは選手を支え、後ろ盾になるべきで、彼らの生理的欲求の処理も含めて、と。
「私がマネージャーになる前も、私の前のマネージャーもこうやってたし、私もこうやってきたの……」
だからヒロインも後継者として同じことをしてきた。これ、伝統なんだ……。
時に思うんだが、この定型は無理やりこじつけた感がある。エロパートがなくても、ヒロインの熱血だけで十分シナリオは成立する。ただ抜きゲーだからこう書かなきゃいけない、それ以外に方法がない、みたいな。そうとしか理解できない。

ゲームの作りは丁寧で、BGM は常にテーマ曲の様々なアレンジ。主題歌の OP も熱くて、歌は nao。ヒロインの CV はみんな大好き野上菜月で、かなり柔らかい。ただこのゲームの一番の見どころは演出方法で、吹き出しの表現はまるで「動く漫画」のよう。これも『聖倡女』の時からあった特色で、frill がまた拾い上げてくれたのは嬉しい。

ゲームの最後、元マネージャーがヒロインに意味深長に言う。自分は卒業して引退するから、ヒロインにはチームを一人で支えてほしい、だから最終戦には自分は参加しない、と。最後はもちろん死闘の末、ヒロインと部員たちが力を合わせて優勝を勝ち取る。

とまあ……このゲームはかなり定型的で、典型的な「素人が何かに情熱を燃やし、参加してから dalao(達人)になるまで」の成長物語だ。ただヒロインがハイレベルなマネージャーになってチームを勝利に導く過程で、体を捧げてエッチすることを経験するだけで。
エッチは核心じゃないだろ?熱血と成長こそが核心なんだよ。ゲームも確かにそう書いている。ただこのゲームのタイトルが……方向性を決めてしまったせいで、すごく low な印象になってしまっている。
本来こんなに low なゲームじゃないはずなのに、タイトルがこうなってしまっては、もう仕方ない。
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