『GRISAIA Phantom Trigger VOL 2』レビュー
物語の始まり
数年前、『グリザイアの果実』はFrontwingのアニバーサリー作品として大ヒットした。ヒットしたのには理由がある。まずゲーム自体の質が高く、「日常ギャグ」と「シリアスな本筋」を見事に融合させていた。30時間にも及ぶ共通ルートはひたすら日常ギャグ、そしてもう片方の30時間の個別ルートは怒涛の超展開。この「両方をしっかり押さえる」作りが高評価につながったのは当然だ。
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その後frontwingは調子に乗って、このシリーズの続編を出す。『グリザイアの迷宮』、『グリザイアの楽園』、さらにゲームのDLCもいくつか追加し、最後のDLC『グリザイアの旋律』を以て『グリザイア』シリーズは完結した。ゲームシリーズはアニメ化もされた。frontwingは「グリザイア」シリーズに区切りをつけて、新しい「反米神ドラマ」に取り掛かったように見えた……

だが、その新作「反米神ドラマ」こと果つることなき未来ヨリの評価は芳しくなかった。frontwingが立ち上げようとした新ブランドはこうして失敗した……
で、何が起きたか。frontwingはあちこちに手を広げ、「グリザイア」シリーズの評判にあやかって食い扶持を稼ぎ、Steamに進出して萌えゲーを売り、海外市場を開拓……正直に言うと、frontwingの海外市場での仕事はかなり良いと思う。自社製品だけでなく、『車輪の国、向日葵の少女』のパブリッシャーまで務めた。しかしこれではダメだ。新作はISLAND以外ろくな出来じゃない。このままでは売れる新作を出せず、ジリ貧で終わる……
そこでfrontwingは閃いた。Steamの海外市場がこれだけ好調で、海外勢が「グリザイア」シリーズをこれだけ気に入っているなら……続編を出せばいいじゃないか、と。

そうしてduang duang duang!新しいゲーム、GRISAIA Phantom Triggerが登場した。ただ、このゲームは想像していたものとは違っていた……
注目すべき点は三つ。
1、GRISAIA Phantom Triggerは全年齢向けで、続編の看板を掲げているのに旧キャラが一人もいない。登場するタナトスAIの声が風見一姫なだけだ。 2、GRISAIA Phantom Triggerは分巻販売で、一巻につき一話の内容。しかも全何巻になるか未定。frontwingは「売れればいくらでも出し続けられる」とまで言っている。 3、GRISAIA Phantom Triggerの絵師は渡辺明夫だけ、脚本も藤崎竜太だけ。fumio先生もキャラクターデザインから外れ、なんだか欠けた「グリザイア」シリーズという感じだ。 4、GRISAIA Phantom TriggerはSteam先行で、しかも日本語と英語だけ。
多くの人、そして私も失望した。中国語版は同時発売されず、グリザイアシリーズと比べて布陣は縮小し、18禁要素は削られ、しかも分巻で金を吸うやり方……
だからGRISAIA Phantom Triggerが出た時、遊ぶつもりはなかった。どうせ一巻ずついつまで出るか分かったもんじゃないし……。それでも結局、私は手を出してしまった。ただし遊んだのは海賊版だ……最初から失望していなければ、Steamで先行購入していたはずだ。
ゲームは途切れ途切れにだがクリアした。長さはそれほど長くなく、最初に出たのは第一巻と第二巻。第一巻は約6時間、第二巻は約5時間で、合わせても短編ゲーム一本分の長さだ。
で、感想はどうか……タイトルを見てくれ。ただの物語の始まり……それだけだ。

ゲームの設定は『グリザイアの果実』の後の時間軸。かつての学校は再び利用され、SORDという特別行動組織を教育・育成する学校になっている。主人公ハルトは長い髪をした学校の教官で、学校の生徒は様々な経路で引き取られた孤児や特殊な身分の少女たち。普段は授業を受け訓練し、組織が必要とすれば主人公が引率して任務に出る。任務は暗殺、護衛、突撃など……
要するに軍学校のようなもので、映画『赤裸特工』にも少し似ている。ただ、このゲームのヒロインたちは体を武器にする必要はないが。

このゲームのストーリーは本当に語るべきことがない。第一巻は新しく学校に着任した女教師の視点でゲームの環境とキャラを紹介し、最後に最初の事件が起きる。女教師が武器密売組織の連絡役と間違えられて誘拐され、主人公が隊を率いて救出に向かい、ヒロインたちが初めて頭角を現す。第二巻はもう少し真面目な内容だが、こちらも目的ありきで、新キャラを出すため……つまり南條愛乃が声を当てる井ノ原真紀を引き立てるために、「ロシア犯罪組織の頭目が臓器移植用の心臓の提供元を強奪する」という事件を用意している。南條愛乃演じる井ノ原真紀はそのロシア犯罪組織の頭目に属する傭兵で、最後は当然主人公側に敗れる。そしてヒロインのレナと井ノ原真紀は実は知り合いで、二人はかつて同時に孤児となり、同じ組織に捕まって商品として売られていた。井ノ原真紀は敗れた後、主人公に捕虜にされ、最終的にはうまく懐柔されて仲間になる。

ゲーム二巻分の内容はこれだけ。どこかで見たような気がする、そう、連載小説や連載漫画の冒頭のようだ。第一巻で設定を語り、第二巻で新キャラを導入し、本当の物語はまだ始まっていない。

GRISAIA Phantom Triggerの第三巻もすでに発表され、トーカ、つまり佐倉綾音が声を当てるロリの過去を重点的に描くと明言されている。どうやら今後のゲームは各ヒロインの過去の背景を紹介するのが主になりそうだ。各ヒロインの過去を紹介し終えて初めて、物語をよりよく展開できる。そしてどこまで展開できるかは……ゲームの売れ行き次第だ。

このパターンは本当に見覚えがある。完全に連載ラノベや漫画のスタイルだ。ただfrontwingは別の道を選び、ギャルゲーを強引に連載作品として売ろうとしている。成功するかは本当に分からない。ギャルゲーの受け手はラノベや漫画より少ないからだ。だが……frontwingには海外市場に多くの海外オタクファンがいて、Steamでの売れ行きは絶好調。収入は国内の王者ゆずソフトを超えていると思う。Steamでの好調な売上に支えられれば、このゲームは本当に続けられるかもしれないし、奇跡を起こせるかもしれない。

ともかく、Frontwingが「ギャルゲーを国際的に広めよう」としている点は評価できる。アイデアも多く、パターンも多い。GRISAIA Phantom Trigger自体はなかなか良い。戦闘は刺激的、グラフィックは繊細、CVは努力していて、プロモーションは力が入っていて、音楽はいつも通り、スタイルも変わっていない。特筆すべきは英語翻訳が非常に面白いこと。ぜひ見てほしい。翻訳がとても生き生きしていて、frontwing内部に凄い人がいる。

長所をこれだけ挙げたが、このゲームは総合評価できない。他がどんなに良くても、物語については本当に何も見えてこないからだ。声優陣にも突っ込みどころはある。例えば内田の演技はちょっと精神病すぎる。絵柄は相変わらず。前述の通り、GRISAIA Phantom Triggerというゲームがどうなのか、正直よく分からない。何しろ、これはただの物語の始まりにすぎないのだから。
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