『ノラと皇女と野良猫ハート』レビュー

少ない金で、最大の仕事を

広告

最近のギャルゲー原作アニメはどれもこれも気まずい。気まずすぎて新作がほぼ出てこないレベルで、前に蒼の彼方のフォーリズムがギャルゲー原作と言えたくらいで、その後はワガママ high specがひとつあっただけ。しかもそっちはショートアニメだ。何年も前から噂されていた Island のアニメ化も音沙汰なし。そんな中、ようやく新しいギャルゲー原作アニメが来た。

ノラと皇女と野良猫ハート

広告

选区_342.png

個人的にこのギャルゲー原作アニメにはかなり期待していた。なぜならゲームが本当に良いからだ。ゲーム全体は脚本の面でも音楽の面でも頂点と言っていい出来で、音楽は BGM がとにかく丁寧。OST を聴くと意図の感じられる曲がいくつもあって、王女のテーマも何パターンも転調して使い回され、メロディとテーマの距離が近くなるよう作られている。脚本のほうはというと、四文字でまとめられる。緩急自在。

いわゆる「緩急自在」とは、ゲームのシナリオがほのぼの系でありながら笑いもあり、さらには人生哲学めいたものまで含んでいるということ。しかしこうした一見衝突する要素を、脚本が見事に融合させている。笑うところは笑わせ、笑ったあとに少し切なくさせ、その切なさの中からさらに人生の道理がにじみ出てくる。だからこの作品がアニメ化を宣言したとき、自分は楽観的に「銀魂」並みの効果すら出るんじゃないかと見ていた……

現実はすぐにぶん殴ってきた。アニメの告知が出た瞬間、自分は完全に呆然とした。

ショートアニメ / デフォルメキャラ / DMM 製作

この三つのタグが、このアニメに関する悲惨な事実をはっきり示している。

金がない

アニメ製作は金がかかる。ギャルゲー原作アニメはスポンサーがついても駄作になることがあり、例えば 11eyes がそうだ。シナリオに問題がなくても絵柄の再現が難しい作品もあるし、そもそもギャルゲーのシナリオは濃すぎるものが多く、アニメ化すれば必ずバッサバッサ削られて七零八落になる。苦労して報われない典型だ……

金があっても良いアニメになるとは限らないのに、金がないだと?

もう終わりじゃん!

でも前に書いた通り、このゲームの脚本・はとは腕が立つ。脚本の緩急をしっかり掌握している。しかもこのアニメのシリーズ構成と脚本は彼なのだ……

彼ならアニメでも「緩急自在」を掌握するはずだろ?

だから第1話はまあ OK、第2話もギャグ四コマ漫画としてはそこそこ、第3話……第4話……第5話……

一本ずつ見ていくと、ギャグの小さな四コマ漫画としてはなかなか良いじゃんと思えてきた。第6話までは……

うわ、なんだこれ?

选区_345.png

あとこれもなんだ?

选区_344.png

そもそも第6話は完全にアニメじゃないだろ。ただの羊の動画に CV を当てただけじゃないか?

マジで予算が尽きた?アニメすら作れなくなった?

ところが後のほうの話数を見ると、実はアニメも作れることが分かる。ただ遊び方が次々に出てきて、お色気回あり、ギャルゲーの画面をそのまま使う回あり、本筋に戻って泣かせに来る回あり。そしてなぜか最後まで見終えたとき、はたと悟った。これ全部、脚本・はとの陰謀だ。

考えてみれば、ギャルゲーがアニメになる理由はひとつしかない。ゲームの宣伝のためだ。ギャルゲーアニメそのもので儲けたいなんてケースはごく少ない。

ノラと皇女と野良猫ハートのような、金がまったくないアニメ企画にとって、ゲーム本体を効果的に宣伝し、看板を打ち出し、ショートアニメを見た人にゲームへ興味を持たせること。それができれば成功だ。

だからこそ脚本・はとの手管の深さが見えてくる。ゲームの OP を見れば分かる通り、妙ちくりんな「太平洋」を入れて、11区のオタク考証勢の強迫観念を刺激している。実際この「太平洋」には全然意味がない。ただ「話題」があると感じさせるためだけのものだ。この「話題性」の炒め方において、はとは確かにベテランだ。最大の爆点は第6話の「全羊回」。全部羊、それ以外何もない。多くの人は最初こそ意味不明だと感じるが、「この設定を受け入れればけっこうイケる」となり、あっという間にアニメ全体の話題と熱が上がっていく。アニメ自体もショートアニメで短く、人を引きつけやすい。OP も悪くないし、アニメ本編のネタもいくつかある。例えばあの「お母さんからの宝物」とか。だからはとが「アニメ自体の熱を炒める」ためにやった貢献は前半だけじゃない。後半の妙にギャルゲー画面を模した「探偵回」もそう。これらはすべて企画側がアニメを作る上での優れた智慧を示している。

終盤になると本筋に戻り、ショートアニメを追って見ていた人にゲームのおおよその流れを伝える。アニメはその使命をちゃんと果たした。

使命とは何か。予算不足のアニメで、ゲーム本体を宣伝する効能を上げることだ。

意味不明でちんぷんかんぷんに見えるアニメのネタが、アニメ自体をニコニコで爆発的に人気にし、原作に注目する人もどんどん増やした。ノラと皇女と野良猫ハート2 もまもなく発売で、今のところ売上はかなり好調に見える。

こういうとき、脚本・はとは本当に才能があると思う。「能力が高い」の最大の褒め言葉は、「最小の金で最大の仕事をする」に尽きる。

ならばはとは、「少ない金で、多くの仕事をする」行動の代表格だ。

ヤバすぎる!

本家 plumz.me でこの記事にコメントする

コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。

目次