『Making*Lovers』レビュー

ページ屋からヒモへ

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少し前にこんなことを考えた。

いったいどのギャルゲーが、リアルの恋愛にいちばん近い恋愛体験を提供しているんだろう?

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無理やり考えてみると、真っ先に浮かんだのが SMEE という会社のゲームだった。

そう、SMEE は HOOKSOFT と実質同じで、「段階的な恋愛」を描くことに重きを置いていると謳っていて、「主人公とヒロインが、出会いから知り合い、知り合いから恋に落ち、恋から……いや、恋からゴールインへ」みたいなスタイルのゲームをよく出す。ただし口ではそう言うものの、ゲーム自体はあまりそう見えないんだけどな。

なんだろう、SMEE のゲームは日常の中でギャグや小ネタをやる感じのものが多い。最初のフレラバ friend to loverの頃はまだそこまで露骨じゃなかったけど、後のPureXConnectだのステップ彼女だのからは、ゲームのギャグ部分にどんどん重心が移っていって、ヒロインの個性や主人公のツッコミをより誇張した表現で見せるようになった。中には主人公まで変態みたいにして、そっちにツッコませるものまである。

SMEE はギャグ路線でどんどん逸れていってる感じがある。特に前作の「田舎恋愛」なんかはもう小ネタの集合体で、ヒロインたちにもこれといった特徴がないし、絵柄も怖いし、プレイしててマジで苦痛だった。本田さんが演じる田舎のお嬢様がゲーム中ずっと下ネタを連発するのを見せられて、しかも精子を観察するらしい小ネタとかもあって、泣くに泣けず笑うに笑えず、最後の告白もすごくお約束で気が抜けてて、わけわからんまま終わった。

個人的に好きなのは SMEE 初期のフレラバのスタイルで、ゲーム中の会話は「女の子を知る」ことが中心、選択肢も「女の子とコミュニケーションを取る」ことが核になっている。しかも多くの女性キャラの造形がリアルの恋愛にかなり近い。特に望月里奈、それに野菜を売ってる沢渡岬先輩あたりだ。これが SMEE のゲームがリアルな恋愛に近いと言っている理由でもある。

そして今回 SMEE がまた新作を出した。Making*Lovers だ。これもプレイヤーが恋愛対象を探すのが主導で、スタイルはやっぱりあの軽妙でユーモラスな会話タイプ。しかもゲーム開始時にすごく簡単なプレビュー版が配信されて、各ヒロインと数分ずつ会話する程度のもので、正直何がなんだかわからなかった。その後体験版も出たけど、もうすぐ発売だし見る気も起きなかった。

製品版をプレイして言えるのは、これは近年の SMEE でフレラバの次に良いゲームだということだ。

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Making*Lovers の舞台設定はこれまでの「学園恋愛」とは違う。主人公は最初から働いていて、しかも1年ちょっとで辞めた人間で、目標は Web Designer になること……世間でいうフロントエンド、別名「ページ屋」だ。

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主人公の年齢は25〜30歳くらいと推測できる。再婚で血の繋がらない妹がいて、日本の中でも少し大きめの都市で一人暮らしをしながら、フロントエンドの知識を学んで再就職しようとしている。しかも実家の親からは結婚をめちゃくちゃ急かされている。

この主人公設定、すごく馴染みがないか? 正直、ギャルゲーの受け手の多くは主人公と似たような層なのに、ほとんどのギャルゲーの設定はクソみたいに画一的な高校生ばかりで、大学生設定ですらかなり珍しい。だから今回の SMEE の主人公は、かなりリアルだと言える。

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ゲームの展開はタイトル通り、ほぼ「恋人を作る」ことが主軸だ。どうやって作るのか?

わかるだろ、「出会い」と「見合い」……あとは内需拡大だな。

主人公は最初、二次元を愛するから結婚なんて面倒だと高らかに宣言している。でも主人公の親はよく妹を説得役として送り込んで来てさっさと相手を見つけろと言ってくる。主人公もよくよく考えてみれば別に孤独死したいわけじゃないし、内心では彼女が欲しい。そんなこんなで、悪友が紹介する合コンに参加することになって、見合いの旅が始まる。

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見合いでは大学時代の同級生に出会って、それを縁に新しい感情が始まる。同時に見合いの名目でテレビ局の天気予報のお姉さんと知り合うチャンスもある。トイレに行った時にファミレスのウェイトレスと偶然出会うこともあるし、学生モデルと知り合うこともある。もちろん全部嫌なら身近なところで済ませて、自分の妹に手を出すこともできる。

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ここで説明しておきたいのは、Making*Lovers が他のギャルゲーと最も違う点、共通ルートが存在しないことだ。

このゲームのルート分岐は非常にシンプルで乱暴だ。一度でも会った女の子に少しでも傾きを見せたら、OP の後には他の女の子と知り合う機会を失う。

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例えば、俺は主人公の最初の合コンに参加したけど、大学の同級生にあまり傾かなかった。次の日、2回目の合コンに参加して、テレビ局で天気を読むお姉さん、鳴瀬咲と知り合った。

そしたら他のヒロインとはお別れだ。SMEE の過去作のように「まず他の子とも知り合ってから最後に決める」的な内容はなく、選択肢ひとつでルートが決まる。あとはゆっくり進展編→恋愛編→エンディングと進むだけだ。

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わかるのは、この SMEE の新作が「全ヒロインを出してから、どうでもいい共通ルートを挟んで、最後の選択肢でルートに入る」という伝統的な流れを完全に捨てて、1対1を志向していることだ。これは良くも悪くもある。悪いのは、多くのヒロインをよく知らないまま別れてしまうこと。良いのは、恋愛描写がより集中できてリアルになることだ。

そう、今作の SMEE の恋愛描写は、少なくとも現実とのリアル度80%はある。ヒロインが言うことは現実の女の子が言うことだし、ゲーム中の「見合い」の気まずい描写も現実的だ。例えば主人公が初めて、悪友が紹介する「お姉さん」に会いに行く約束をして、バーで酒を飲んでいるお姉さん、鳴瀬咲に出会う。見合いだから二人とも緊張していて、主人公は何を言えばいいかわからない、咲も何を言えばいいかわからない、完全に気まずい会話。でも主人公は咲を綺麗だと思って、気まずさを埋めようとずっと喋り続けて、すごく大変だった。

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そこに悪友から突然電話が来て、本来の「お姉さん」が来られなくなったと告げられる。主人公ははっと気づいて、咲が見合い相手じゃなかったとわかる。咲も同じことを経験していて、お互い人違いだったとわかる。

その後二人はほっと息をついて、むしろ気楽に話し始める。もう気まずい会話もなく、話題も途切れず、互いに好意を持つ。

だからめちゃくちゃだけどロマンチックなのは、感情はいつもこういうわけのわからないところから生まれるってことだ。

その後の展開はとてもスムーズだ。主人公と咲はもっと会う機会が増え、咲がテレビ局で天気を読む仕事をしているとわかる。それから接触が増えるにつれ、咲は半分冗談で「彼氏にしてあげようか、どうせ独身で長年嫁に行けないんだし」と言い、主人公は否定しない。関係はそんな冗談半分で確認される。

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接触が増えるにつれて、咲は年上のお姉さんだけど思ったよりずっと純粋で、いろんなことをあまり知らない。しかも咲は自分の仕事があまり好きではない。

「昔は自分が何をすべきかわからなかった。全部親が決めて、テレビ局がいいって言うから、天気を読むのも悪くないかなって来たの。」

「大学で気象を専攻した時は、天気を研究するのかと思ってた。でも今は天気を伝えるだけの伝声管で、辞めようと思ってる。」

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偶然から主人公は咲のテレビ局に臨時職員として応募し、テレビ局が番組改革でどんどん娯楽化しているのを見る。これは咲が望む専門性とはほど遠い。咲は、多くの人は本当に天気を知りたいわけじゃなくて面白いと思っているだけ、こんな仕事に価値はないと感じて辞めたがっている。

「誰にでも人生で困難にぶつかる時があって、そんな時は諦めたい、辞めたい、離婚したい、死にたい……って思うもの。でも、そんなに悲観的になるべきじゃないし、簡単に決めるべきでもない。ちょっと待てば、違う考えになるかもしれない。」

主人公は咲を引き止め、咲は主人公をとても頼りになる人だと思い、二人の関係はさらに進む。

さらに進んで本当の恋人になるわけだが、そこで主人公は意外なことを知る。咲の家はどうやらすごく金持ちらしい。

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咲は街の高級別荘に住んでいて、咲が働くテレビ局の上司は親戚だった。話を聞くと、咲の両親は上流階級で、咲はそのせいで子供の頃から人生を計画されていた。学校、専攻、テレビ局への就職。咲は年を重ねるにつれてそれに不満を感じるようになり、特に結婚の時期になると親が次々と見合いをセッティングし、相手が見つかったら外で一人暮らしはできず実家に戻れと言われていた。だから咲は最初、見合いにすごく抵抗があった。でも幸運なことに「人違い」で主人公と出会い、主人公と一緒にいることで確かに「自由」を感じていた。

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最後の結末は当然、主人公が仕事を成し遂げ、咲は専業主婦を選ぶ。

実は Making*Lovers はストーリー的に語ることはあまりない。不必要なものを大部分削ぎ落として、恋愛という本筋だけを残している。しかも恋愛過程の大半はデート、会話、彼女とのいろんな交流だ。

この交流会話について言うことはあまりない。ただリアルだったとしか言えない。多くの場面で自分の彼女の影を見た。

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今思うと SMEE はむしろ一番良心的な会社だ。ずっと「オタクでも恋愛できる」ゲームを作ることに力を注いでいて、ゲームの中でオタクが女の子の好意を得る方法と機会をたくさん教えてくれる。

例えばゲームの最初に主人公は変態だと語られる。それでも主人公には強い責任感があり、一番大事なのは主人公が肝心な時にうまく話せることだ。その「肝心な時」とは、彼女が迷っている時、助けが必要な時、自分を否定している時。

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つまり恋愛の大部分は男性が自分の「優しさ」を高めて、女性に頼りになると思わせることで十分なんだろう。しかも多くの女性は恋愛後、次第に受け身の側になって、男性に譲歩し始める。譲歩の度合いが大きいと、逆に笑っちゃうくらいのもある。

例えば咲のこれ。「私の彼氏こんなにいいんだから、他の子に狙われるのも普通でしょ。たとえ浮気しても、最後に私のところに戻ってきてくれればいいの。」

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もちろんゲームはあれこれ教えてくれるけど、唯一教えられないのは「友達」から「恋人」への告白の勇気だ。これが一番難しいところなんだろうな。

「ヘタレに彼女は無理」と嘲る人もいる。耳が痛いけど、確かに一理ある。ほら、ギャルゲーの主人公ってみんなヘタレじゃないだろ?

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Making*Lovers は今月かなり良いゲームだ。典型的なギャルゲーとして、ゲーム企画としてあるべき目標を達成しているし、ゲームの OPはあんなにいい曲だし、各方面の作りが丁寧で、一番光るのは恋愛描写のリアル度が高いことだ。小野涼子の同級生を選んでも、森谷実園の学生モデルを選んでも、妹を選んでも、俺の彼女と似ている鳴瀬咲を選んでも、プレイヤーはリアルに甘い恋愛を感じられる。このゲームの価値はそこにある。

もちろん欠点がないわけじゃない。ゲーム中の「共通ルートの欠如」は欠点と言えるだろう。初回プレイではすぐに誰かのルートに入ってしまって、やり直す機会がない。しかも SMEE のゲームは大半がやり込み要素に乏しい。ゲーム中で「デートにどこへ行く」「デートで何をする」は選べるけど、キャラごとに選ぶ内容は同じで、一度やれば二度目をやる気はほぼ起きない。


ちなみに咲ルートでは、最終的に主人公は最初にフロントエンドのページ屋になる夢を完全に忘れている。彼女がそんなに金持ちなら、結婚して婿に入った方が楽しいに決まってる。仕事を成し遂げて家庭を養うと言いつつ、きっと義父にかなり頼っているんだろうな。

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つまり我らが主人公はページ屋からヒモへと転身を遂げたわけだ? これって人間のリアルってやつか。

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