『将軍様はお年頃』レビュー
将軍様はお年頃——武士は色気盛り、将軍は恋に目覚めたばかり
ずっと前から予感はあった。Alcot という会社はもうダメなんじゃないかと。
考えてみれば Alcot の全盛期は Clover Days の前後の時期だろう。分社の Alcot Honeycomb も活気づいていたし、Clover Days 自体が絵柄で圧倒的に有利だった。それに「春季限定」や「未来無視」シリーズの妹ゲーも独自のスタイルを確立していて、どう見ても飛躍する勢いだった。
しかし現実は違った。理由は知らないが、聞くところによると Clover Days は売上が振るわず赤字だったらしい。その後 Alcot Honeycomb の作品も魂を失ったようで、一時は地雷請負人にシナリオを書かせ、看板絵師も辞めてしまった。LoveRec というゲームはまあ悪くないと思ったが、評価は平凡だった。
それからどんどん悲惨になっていった。Alcot が去年出したママ女神ゲーなんて見る気すら起きないし、レビューすら見つからない。完全に空気扱いだ……
Alcot の公式 Twitter も毎日のようにツイートしているが、どれも「会社倒産売り尽くし」の既視感しかない。売っているのは Clover Days のグッズやら、その他古臭いものばかり。この感じ、いつ倒産してもおかしくないと思わせる。
そして今年、Alcot は新作を出した。キャッチコピーは「Alcot シリーズ作品の正統続編」。見た瞬間、あ、これは本当に倒産する流れだなと悟った。
なぜなら、以前に「正統続編」なんて売り文句を出した会社は Lass だ。彼らも最後に「長らく発売延期していた正統続編」を出し、そして潰れた。
もっとも不思議なのは、Alcot に正統続編なんてあるのか?ということだ。LoveRec は即席で作ったのか?Clover Days も間に合わせだったのか?よく見れば分かる。おそらく彼らの元々の「パロディ穿越セミSF」路線のシリーズ作品の正統続編という意味だろう。『幼なじみは大統領』や『鬼ごっこ!』、『中の人などいない!』あたりがその路線だ。その後の作品は方向性がずれていったので、今回の「正統続編」は元の路線に戻るというだけのことだ。
そして新作のタイトルは『将軍様はお年頃』。

この新作の「将軍様」は男か女か?Google で調べれば残念なことに分かる。一般的な日本人が「将軍様」と聞いて思い浮かべるのは金正日だ。もちろん Alcot にゲームで金正日を犯させる度胸はないので、ここでの「将軍様」は当然女将軍だ。
舞台は江戸時代、幕府将軍の統治期(またこの時代かよ、日本ってこの時代しか語れないのかって感じだが)。現代から過去へタイムスリップした主人公と妹が、そこで地元の武士や将軍とイチャイチャする話だ。
ゲームは主人公と義妹が道路で突然事故に遭うところから始まる。義妹が持っていた太極図形の鏡が光り、光が消えると主人公は死んでおらず、なぜか江戸時代にタイムスリップしていた。さらに驚くことに、事故に遭った妹も死んでおらず、一緒に飛ばされていた。

二人はただ飛ばされたわけではなく、古代の二人と入れ替わっていた。主人公は古代の剣客(武士?まあ剣が使えるやつ)の身分に、義妹は古代の商人の娘の身分に入れ替わった。主人公は目覚めると、自分が何者かに襲われて重傷を負ったこと、そして何人かに会うことになる。特に徳田義宗という女武士がやけに親切で、剣術の勝負をしたいとか、主人公が神剣を持っているとか言う。
もちろんその剣は本当に神がかっている。しゃべるからだ……まあ霊性があると解釈してもいい。
その後の展開はあまり面白くない。主人公は徳田義宗の紹介で多くの人と知り合う。徳河宗春という巨乳の妹もその一人で、徳川家の親戚で将軍の血を引いていると言う。封建王朝でいう王爺みたいなものだ。同時に、この「新本橋」という町で人身売買の誘拐事件が起きていて、奉行所も調査していることを知る。
主人公の周りはそれだけではない。妹は商人の娘の身分で、名目上は主人公の婚約者でもある。しかしその商人は経営不振(米価が高すぎて飯も食えない)で借金取りに追われていた。借金取りは他でもない、娘を借金のカタに寄越せと言い、商人の娘を自分の女房にしろと迫る。

しかし渡してしまったらこのゲームは寝取られゲーになってしまう。主人公と妹は当然抵抗する。借金取りはムカついて力ずくに出ようとするが、刀を持った主人公には敵わない(刀がしゃべって霊性があるからチートみたいなものだ)。借金取りは怒って、いずれ商人の娘を連れ去ると言い残す。

そしてある暗夜、商人の家が襲撃され、妹(商人の娘)がまた拐われそうになった時、主人公が止めに入る。意外なことに、商人の家の近くで見かけた「りん」という少女が人売りのスパイで、彼らに協力していたのだ。最後は当然、ありがたく説教と思想改造を施し、りんちゃんは主人公と協力して婦女誘拐組織を一網打尽にすることを決意する。

女武士・徳田義宗と徳河宗春の調査により、人身売買の背後に大物がいることが分かる。一行は証拠を掴んでその大物のところへ乗り込む。大物はもちろん服従しない。権力もあるしなぜお前に従わねばならんのだと。まさに土壇場で、女武士・徳田義宗が正体を明かす。彼女の真の姿は幕府将軍・徳河吉宗(徳川吉宗)で、ずっとお忍びで民情を視察していたのだった。大物は恐れおののく。(日本人は『康熙微服私訪記』をあまり見ないからな。皇帝がイキる展開はこっちでは見飽きている)

最終的に悪の勢力は将軍の権力の前に全て一網打尽にされる……将軍もイキり、主人公はようやく身近にいた女性ストーカーが幕府将軍だったことに気づく。

ここでこのゲームの半仮想設定を説明しておこう。ゲーム内の将軍は歴史上の徳川吉宗だろう。徳川吉宗の治世は比較的開放的で、明らかにキリスト教を完全には拒否していない。開明的だったわけで、この時代が選ばれた理由の一つでもある。もう一人の徳河宗春は歴史上の徳川宗春で、徳川吉宗と対立した人物だ。二人は愛し合い殺し合う関係(違)とも言える。徳川吉宗は倹約を重んじ、徳川宗春は華美と贅沢を重んじた。理念に多くの違いがある。興味があればこの記事を読むといい(日本語)。
ゲームの随所に日本史の要素が取り入れられているが、大半は魔改造されている。米価高騰や商人の借金などは事実だ。ゲーム内の町は「新本橋」と言うが、現代の日本橋だろう。古人の造形は女性化以外は、話し方が古風なだけだ。
しかし将軍の正体が明らかになり、人身売買組織が壊滅した。これでゲームは終わりか?
いやいや!忘れちゃいけない、あの商人の家はまだ借金が残っている。金を返さなければ娘を差し出すしかない。
そこで女主は現代の知識を活かして副業を始める。ファッション業界に進出し、好評を得て利益が増え、借金返済が見えてきた。すると金を貸した大物が黙っていない。金を返されたら人を手に入れられないではないか。

そこで殺し屋などを手配して妨害しようとする。しかし普通の殺し屋は間抜けすぎて、主人公が助太刀に入り、刀を持った主人公には手も足も出ない。そこへ黒い影が現れる。死神と名乗る武士が刀を持ち、大物の依頼を受けて、商人の家で借金取りを妨害する主人公を殺すと言う。
この黑影の武士の狙いは実は主人公ではなく、主人公が持つしゃべる刀だった。
その黑影の正体は妖刀で、主人公の刀とは敵対関係にあった。数年前(江戸時代)に一度戦い、妖刀は敗れてこの世から消えた。その後再び現れ、処刑人の体と魂を吸収して肉体を得て、主人公の刀に復讐しようとしていた……

主人公は最初、妖刀との戦いでは勝てない。何しろ剣術などできず、刀に任せて戦うだけ……逃げるのが精一杯だ。そこへ奇妙な女が主人公を見つけ、妖刀はかつて日本のある国家的組織が秘蔵していた秘宝で、自分はそれを回収に来たが妖刀は制御不能になったので、主人公に倒してほしいと頼む。
主人公は「倒せるわけねえだろ」と言うが、その女はチートをいくつか授け、ついでに主人公と妹が古代に飛ばされた理由も教える。

妹が持っていた太極図の鏡は実は魂を反射する神器で、自分の血で魂を鏡に結びつけ、他人の魂と交換できる。主人公が事故に遭った時、妹と自分の血が鏡に染みた。そして300年以上前、商人の娘とこの武士が拐売犯と戦って流した血も鏡に付着していた。こうして四人は時空を超えて魂を交換したのだった。
奇妙な女は、主人公と妹を未来に戻すこともできるが、まず妖刀を倒してほしいと言う。
主人公が迷っていると、妖刀が先に動き、妹が拐われ、妖刀はそこに立って主人公が来るのを待つ。

最後は当然戦いとなり、正義が悪に勝つ。妹がとっさに鏡を主人公に向け、主人公は本来の刀の持ち主と一体化して剣術を獲得し、敵を倒す。
最後には町の混乱も収まり、主人公と妹は古代人に別れを告げて未来へ帰る。未来に飛ばされていた二人も元に戻る。

主人公が過去に行ったことで歴史は少し変わったが、妹との関係には問題なかった。主人公は未来社会でその古物、あの刀を手に入れる。刀は300年以上待ち、江戸時代のその後のおしどり夫婦の話を主人公と妹に語る。二人はハッピーエンドを迎えたと。主人公と妹も喜び、ゲームは終わる。

簡単に言えば、今回のゲームは最初の『幼なじみは大統領』よりずっと良い。あのアメリカ大統領パロディゲーは大半がデタラメだったが、骨組みは同じでも今回の新作は物語がより成熟している。少なくともタイムスリップの経緯はちゃんと説明されている。
まあ、こんなタイムスリップの筋は中国のネット小説界ではありふれすぎているが。
Alcot の初期作品は「わけがわからない」「つまらない」と叩かれていた。5ch で誰かが『鬼ごっこ!』をクソゲーだとしつこく名指しで批判していたのを覚えている。俺はそのゲームをよく知らないが、体験版を見ても興味が湧かなかった。正直、『将軍様はお年頃』も前半はそう感じた。ネタが寒いし、歴史感があるかと言えば歴史はでたらめ、古風かと言えば古人はそんな話し方しない。香港や台湾の時代劇みたいで、阿哥や格格がイチャイチャしているだけ。話は現代劇で、江戸時代の皮を被っただけ。だからゲームの格は低いままだ。

幕府将軍統治時代の日本史が好きな人もいて、なぜ中国にその時代がなかったのかと嘆く人もいる……時々恥ずかしくなる。中国の幕府時代は春秋戦国で、その後は将軍に大きな権力を与えることはなかった。日本は中国の春秋戦国時代の体制に長く留まった。でも明治維新は中国より早く来て逆転した。皮肉なものだ。

しかし『将軍様はお年頃』は後半から面白くなる。特に妖刀との戦闘シーンは、Alcot が意外に戦闘を描けるんだなと思わせる(Honeycomb 分社は何度かやっているが)。最後の鏡チートは少し熱くなった。これだけ見れば、そんなに悪いゲームでもない。
シナリオは以前の訳の分からない作品より進歩している。少なくとも「普通」レベルには達した。しかし絵はどう評価していいか分からない。妹の表情が変なことが多く、他の脇役の方が可愛く見える。主人公は妹の顔が頻繁に崩れる以外は、巨乳と巨乳と太ももばかり。風俗っぽすぎて、古人はもっと慎みを持つべきだ。

CV で一番期待していたのは妹役の上原あおいだが、今回はダメだった。最近酒を飲みすぎているのか、声が明らかに太くなり、どこか吹っ切れていない。以前の超高速ツッコミと息が詰まるような没入型演技はもう聞けない。あまり気合が入っていないというか、「適当にやってる」感じ。他のキャラの CV は?花澤さくら?普通かな、印象に残らない。女漢子ボイスを聞くのは初めてだったが。
BGM は言わざるを得ない、低レベルすぎる。上の日本語を見なければ、『夢幻西遊』をやっているのかと思うところだった。安っぽい中国製オンラインゲーム RPG の BGM スタイル。作曲は Clover Days の時の Angel note ではなく、なんと Peak A Soul+ を起用。後退だ!本当に後退だ!Peak A Soul+ の音楽は Your diary 以外は本当に流れ作業だ。CUBE のゲームを見ろ、BGM はキャラごとにテーマがあって話すたびに切り替わる。不自然な切り替え、テンプレ化した曲、聞いていてとても手抜き……そして実際、今回の音楽は本当に適当な感じで、曲間も不自然。Alcot は本当に金がないのかもしれない。

ゲームは「将軍を落とす」が売りだが、実際の本当の話は妹とのタイムスリップに関係している。将軍なんてのはただの看板で、落とす落とさないとか……忘れちゃいけない、将軍自体は男で、名前を変えて女体化しただけだ。このゲームのストーリーを動かすのは妹だけ。その妹も模倣の痕跡がひどく、シナリオは Alcot の他の有名作の妹を模しているようだ。「駄妹」という呼び方もそう。他の作品を全部やっている身からすると……うんざり……新鮮さがない。
まあまあのシナリオ、普通の絵、特に見どころのない CV、そして誠意の感じられない BGM。『将軍様はお年頃』は驚きを与えてくれるとは言い難い。せいぜい可もなく不可もなくで及第点。ゲームのいくつかの熱いポイントを加味すれば、良好評価は問題ないだろう。
では『将軍様はお年頃』、このタイトルはどう訳すべきか?考えた結果、『将軍様は発情期』にしようかな……

「お年頃」という言葉は、日本語では表面的には「その年齢になった」という意味がある。もちろん、バカ正直に含蓄で普通に話さない日本人が表面的な意味だけで使うわけがない。「お年頃」はもっと、子供が早く大人になりたいと思う思春期の時期を指す。男の子なら「思春期」でもいいが、女の子を指す場合、この「お年頃」には「思春期」や「発情期」のニュアンスが出てくる。「命短し、恋せよ乙女たち」的なスタイルの意味合いだ。
残念ながらゲーム内の発情した将軍には興味が湧かない。むしろ主人公が刀を持った時の方がカッコいいと思った。
5chの小学生がこのゲームを「将軍様は风华正茂」と訳したが、あまり良くないと思う。
何しろ风华正茂なのは主人公の武士で、将軍様は恋に目覚めたばかりの小娘にすぎないのだから。
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