『ワルキューレロマンツェ』レビュー
Moonrise Romance
最近、なんか欲求不満なんだよな。歳を取るにつれて、こういう淡々とした筋書きには何も感じなくなってきた。
ゲームを遊びすぎたせいか、もうどんな展開も見尽くした感じで、ありがちな流れを見ても「ふーん」で終わってしまう。最近は「刺激的なやつ」「激しいやつ」を探したくなっている。
もちろん深読みはしないでくれ。変な何かに目覚めたいわけじゃない。要は「主人公が弱いところから強くなって、強い敵を一人ずつ倒していって、最後は熱くボスをぶっ倒す」みたいな筋書きが見たいだけだ。
ああ、つまりは「王道」が見たいんだよ。
王道の筋書きなんて少年漫画にはそこら中に転がっていて、例の国民的漫画もみんなそのパターンだ。ところがギャルゲーの世界ではそういう王道がどんどん減っている。手抜きか、無理にひねくって書いて自滅するか。そもそもまともに書く気すらないものもある。前にやった戦闘機のゲームにはガッカリさせられた。こっちだって要求は高くない、あおかなみたいなゲームが一本欲しいだけなのに、そんなに少ないのか。
仕方ないから古いゲームを漁るしかない。そういえばずっと前に見つけて放ったらかしにしてた『ワルキューレロマンツェ』があったな……

『ワルキューレロマンツェ』を最初に遊ぼうと思ったのは、アニメを見たからだ……正直、アニメ化の出来は良かった。戦闘は激しいし、作画も悪くない。しかもアニメの波に乗って続編を二回も出している。普通ゲームの方がアニメより上だから、これにも期待していたし、早々に落として漢化待ちまでしていた……
ところが生肉が読めるようになった頃には、このゲームのことを忘れていた……最近になってようやく思い出した次第だ。
ゲームの流れは長くない。というか余計なものがほとんどなくてコンパクト。もちろんこれは「王道路線」を選んだ場合の話で、王道路線というのはヒロインポジのピンク髪のルートのことだ。
主人公は元騎士。ヒロインの希咲美桜は、騎士だった頃の主人公の凛々しい姿に憧れている。ところが主人公は何かのトラウマを経て騎士をやめ、馬を育てる補助騎士になっていた。美桜は内心かなり落ち込んでいて、男主的にはどうにか彼の自信を取り戻させて、また騎士に戻してやりたい。美桜にしてみれば主人公は強いのに、騎士をやらないのは本当にもったいないのだ。
だが主人公は頑として騎士に戻ろうとせず、淡々と馬の世話を続ける……美桜は焦るばかりで、どうすることもできない。

主人公と美桜の学校には騎馬学科があって、騎士を専門に育てている。主人公は馬を育てる側で騎士ではないし、美桜も騎士科ではない。ところがひょんなことから、美桜が主人公の昔の騎士ヘルメットを眺めていたところ、騎士科の小ボスに絡まれる。小ボスはヘルメットを抱えた美桜を見て、こいつも騎士だと勘違いし、決闘を申し込んでくる。美桜は断りきれず、それに小ボスが手にした主人公の騎士ヘルメットを侮辱したのを見てカッとなって、つい承諾してしまう。
そう、アニメを見た人ならこの先の展開は分かるだろう。アニメは完全に美桜ルートをなぞっている。美桜が素人のくせに騎士科の相手と決闘すると知った主人公は、それでも諦めようとしない美桜を見て、自分が補助騎士として付き合うことにし、まずは馬の乗り方から、騎士としてのあり方、戦いの中で身を守る方法まで教え始める。

そう、身を守ること。主人公は最初から美桜にこの決闘で勝たせようなんて思っていない。なにせ素人だ。こんな短時間でプロと戦うなんて、ケガをしないだけでも御の字、勝つなんて論外だ。

ところが練習の途中で、主人公は意外なことに気づく。美桜は騎士として優れた動体視力を持っていて、高速で動く相手の動きをはっきり捉えて、それに反応して避けられるのだ。

主人公は思う。もしかしたら美桜はこの才能を活かして決闘に勝てるかもしれない……
決闘本番、美桜は最初こそボロボロに負ける。だが主人公は頭がいい。わざと最初は相手に負けさせて油断させ、中盤で反撃に転じる。最初はザコだった相手が急に強くなって吊るされるもんだから、相手はメンタルが崩れてボロを出しやすくなる。そこを突いて最後に一発決める。
美桜は主人公を信じきっていて、指示は全部聞く。主人公がこう動けと言えばその通りに動く。だからこの小さな決闘で、前代未聞の勝利を手にする。

馬に乗れるようになって間もない素人が、プロの騎士に勝つ。これは奇跡だ。たちまち主人公と美桜は学校の有名人になる。
大勢の騎士が主人公のもとにやってきて、自分の補助騎士になってほしい、学校の夏季大会に出てほしいと頼む。
美桜自身もこの決闘で騎士に興味が湧いてくる。主人公は騎士をやりたがらないけれど、自分が騎士になればいい。もしかしたらそれで主人公の騎士への情熱を取り戻せるかもしれない。

結局主人公は美桜を支持する。ただ美桜が騎士になるには問題があった。騎士科じゃないから出場資格がない。主人公は生徒会長で歴代の夏季大会チャンピオンでもあるスィーリアに掛け合うが、門前払いを食らう。
美桜も諦めない。主人公も諦めない。二人は騎士科で知り合った友人を連れてきて、クラスメートの署名まで集めて、美桜を特例として夏季大会に出場させるよう嘆願書を出す。
最終的に会長も大勢の意見には抗しきれず、メンツの上でも断れなくなって、承諾する。
美桜は晴れて騎士として予選に出場する。ところが最初から難関が待っていた。第一戦の相手にまったく歯が立たず、完敗。しかも一点も取れない。
美桜は落ち込む。しかし主人公が立ち上がる。補助騎士として、美桜の才能が動体視力にあること、それを活かせば決勝まで行くのは難しくないと分かっている。ただ美桜は基礎がまるでダメで、なにせ馬に乗り始めたばかりだ。
主人公は美桜に基礎練を重ねるよう言い、同時に落ち込んで諦めないでほしいと伝える。美桜は主人公を信じきっていて、諦めず、それどころか猛練習を続ける。一日中練習して、そのあとバイトにも行く。かなりきつい。

努力は報われる。続くグループリーグで美桜の実力が現れ始め、雑魚どもをなぎ倒して準決勝まで進む。
準決勝の相手は主人公と美桜の友人で、騎士科の強豪・龍造寺茜。美桜と茜は知り合いで、仲もいい。茜は美桜の練習にも何度も付き合ってくれた。ところが今回は敵同士だ。
美桜は茜を前に自信がない。なにせ相手は強すぎる。だが主人公には自信があった。主人公の方がもっと強いからだ。

ここで主人公の実力が半端ないとしみじみ思う。補助騎士でありコーチでもある彼は、相手の癖や隙をはっきり見抜いて、弱点に合わせた対策を立てる。
主人公は茜が攻撃で完璧さや一撃を狙ってくることを見抜く。美桜は技術で茜に劣るから、茜は正面から押し切る戦法を取るはずだ。思った通り、序盤は美桜が苦しみ、まったく突破できない。主人公は美桜にフェイントをかけさせ、相手の体の部位を攻撃してポイントを取り、最後は相手が羽根を狙って KO しようとする意図を逆手に取ってカウンターを決めさせる。
主人公の作戦で、美桜は最後のチャンスをものにして、強豪・茜を倒す。

その頃、もう一方の山では生徒会長スィーリアも相手を破って決勝進出を決めていた。
決勝戦。美桜は前チャンピオン、生徒会長スィーリアと対戦する。
生徒会長スィーリアは非常に強い。美桜はまったく太刀打ちできない。しかもこの人は強いだけでなく容赦がない。手加減というものを知らない。そして何より……
とんでもない腹黒だ。

なぜそう言うかというと、実力は確かにあるのに、試合では騎士道精神のかけらもなく、勝つためには手段を選ばない。たとえばファウルを誘発したり、強引に体を突いて落馬させたり、全防御で手だけ狙ってポイントを稼いだり……
だから序盤の対戦で美桜はまったくポイントを取れず、もう後がない場面まで追い込まれる。このまま負ければ終わりだ。
主人公は相手を長く観察する。こんな腹黒相手に小細工は通じない。だが主人公は相手の弱点を見つける。
後がない局面で、主人公は賭けに出る。次の一撃で相手は美桜の頭の羽根を強引に突いて決めに来ると踏む。相手に動かせるために、主人公は美桜にまずだらけた様子を見せて頭の隙を見せるよう指示する。相手が動いた瞬間、美桜も動いて相手の羽根を直接狙う。

主人公の読みが正しければ問題ない。そして事実、読みは的中する。会長は美桜の隙だらけの姿を見て、羽根を取って決めようと動く。動いた瞬間、美桜は素早く避けて後手に回り、相手はもう防御が間に合わない。美桜は相手の頭の羽根を突き落とす。
最後の一撃。美桜の勝利。かつてのチャンピオンを破り、新たなチャンピオンになる。

この戦いの後、主人公も騎士だった頃の情熱を取り戻し、卒業後は騎士学校に戻ることを選ぶ。何年も経って主人公が帰ってくると、桜の木の下で美桜が待っていた。二人は抱き合い、物語は結末を迎える。

実際、『ワルキューレロマンツェ』というゲームはアニメとかなり印象が違う。まず戦闘描写。アニメはエフェクト重視、ゲームは策略重視だ。
アニメでは主人公がどう教えてどう動くかはほとんど語られず、とにかく突っ込んで突く。ゲームでは突く場面も一枚絵で済んでしまうことが多く、激しい場面はあまり見られない。見えるのは主人公の頭の中の策略だけだ。アニメ版では決戦のときに会長の陰険さも描かれず、試合映像に OP を重ねて流して終わり。ゲームでは会長はかなりの腹黒なのだ。
繰り返し言いたくなるが、主人公は補助騎士でいるのはもったいない。実力は少なくともヒロインより何段階も上で、相手の動きをはっきり見て弱点を判断し、ヒロインの長所で相手の短所を突いて勝つ。

アニメで一番人気だった会長スィーリアは、ゲームでは標準的な悪役。辛辣でずる賢く、戦いでは容赦なく手を出す。もっと「高貴な騎士」で、卑劣な手は嫌うタイプかと思っていたら、全然違った。本人がまず卑劣な手を出す……

他のヒロインのルート、たとえばノエルのルートでも、スィーリアとの対決は彼女がいかに陰険かをよく示している。
ノエルは勝って父親に認められたい、妹にも自信を取り戻させたいと思っている。だが試合でスィーリアを前にすると、彼女はスィーリアに計算され続ける。とはいえノエルも負けず劣らずで、二人の腹黒同士の潰し合いが始まる。そのルートでのノエルとスィーリアの試合は見苦しいの一言、悪質なファウルまで飛び出す……

しかも美桜ルート以外のサブルートはかなり雑で、熱さもあまりない。主人公が誰の補助騎士になるかを選んだあとは、他のヒロインは元々強いので主人公も大して鍛えず、毎日デートしてエッチして、最後の試合でスィーリア会長に負ける……二人も気にせず、そのまま気持ちよくエッチして ED へ。

このゲームは美桜ルートが一番見どころがあって、一番真剣に書かれていて、一番見る価値がある。

二人で力を合わせる王道の物語。美桜は決して強くないけれど、主人公が大好きで、信じていて、主人公のために尽くそうとする。そして主人公も美桜を裏切らず、自分の賢い策で美桜を何度も勝利に導く。
「どうやら最後は二人に負けたみたいね」
会長は試合に負けたとき、主人公にそう言った。美桜ルートはあのインド映画『ダンガル きっと、つよくなる』にちょっと似ている。描写はコンパクトで、無駄がない。最後は少し熱くて、shooting the future が流れたときはちょっと感動した。
前回この感覚を味わったのは、あおかなだった。
そういえば、このゲームはあおかなに並べるだろうか。たぶん無理だと思う。あおかなは試合で選手本人をより強調していて、選手それぞれに物語と考えがあり、背負った過去まであって、主人公が導いてやる必要がある。
だが『ワルキューレロマンツェ』の美桜には過去がない。あるのは主人公への憧れと依存、そして信頼だけ。もしかしたらそれも、二人が奇跡を起こせた理由の一つなのかもしれない。

『ワルキューレロマンツェ』アニメ版の EDを思い出す。これも好きな曲で、麻生夏子の「Moonrise Romance」。ED 映像では美桜が主人公のヘルメットを抱いてうっとりし、最後は主人公の花嫁になって花びらの中に倒れ込む。これもゲームでは描かれなかったロマンチックな情感なのかもしれない。

最後にひとつ。『ワルキューレロマンツェ』の日本語原版はもう Windows 10 では動かない。暗号化が原因らしい。昔『十六夜のフォルトゥーナ』を遊んだときみたいに自分で Hack してクラックを書く気力はもうない。ただ中国語版なら動くらしいので、そっちで遊んだ。

この漢化は心愿屋から流出したものらしい。最初のうちは質も悪くなくて、むしろかなり良い。ところが中盤から後半にかけて質が落ちてくる。主人公がなぜか北京訛りになって……「内个」「内个」を連発する。最後の後日談あたりでは、もう終わりが近いからか、漢化組がふざけ始める……

「来此狗」だの「宝宝心里苦」だの……

まあ、害はないし、いちいち気にしない。どうせ音声は聞き取れる。
そうそう、『ワルキューレロマンツェ』の HCG はすごいとよく言われる。特に会長に放尿プレイがあるとか。
だが……自分で見てくれ。全員に放尿プレイがあるし、全員が主人公にヤられて目が虚ろになって舌を出す。見ていて……なんか変だ……

とはいえゲームの質は本当に悪くない。今の新作よりずっと良い。清水愛や田口阿姨の声がまた聞けて本当に嬉しい。もうアホな仙台のオバサンはいない。
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