『翠の海』レビュー

翠の海:なかなか面白い……シナリオのことじゃないけど

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『翠の海』を知ったのは2年前。ゲームCGの1枚を見かけて、月明かりの下のヒロインがあまりに綺麗だったから、もっと何枚か探そうと思って検索してたら、CGがおかしなことになってるのに気づいた。同じポーズでヒロインが血の付いた包丁を握ってるCGがある。ああ、はいはい、分かった、闇落ちヒロインの設定なんてそこら中にあるし。調べるとどうやら漢化組が翻訳中らしい。じゃあ中国語版を待とう、と待って待って、待ちに待って、俺みたいな雑魚が生肉に手を出し始める頃になっても漢化の報せは来ない。仕方ないから本体に手を出した。

このゲームについてはあまり知らなかった。プレイ前にざっと見た感じ、評価はおおむね好評。ただ誰もシナリオには触れてなくて、選択肢を間違えると死ぬ、とだけ書いてあった。

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「男主が死ぬくらい大したことじゃねえだろ。」

というわけでゲーム開始。

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ゲームの流れは長くも短くもないが、100%にするにはかなり時間がかかる。二周目が必要な選択肢もあって、最後のタロットカードの構造から見る限り、ネットに流れてる攻略に書かれてるより遥かに多くのエンディングがある。その分だけ分岐選択肢も多くて、これがタイトルで言った「面白い」ところ。もちろんタイトルで「面白い」って言ったのはシナリオのことじゃない、これも本音。

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なぜならシナリオがとにかく単純すぎるから。

ざっくり言うと、森の奥に洋館があって、とある謎の組織が金持ちの依頼で人を催眠・記憶喪失にして軟禁する場所。外部にはその人たちが「失踪」したと発表する。大半は大物権力者の家が自分の一族の汚点を処理するためにやること。名家にとっては一族のクズを片付けるのにちょうどいい方法ってわけ。

洋館には定期的に最低限の食料や衣類が届けられるだけで、他は何もない。ヒロインの小満(原名:みちる michiru、まあ小満でいいや)は早い時期にここへ来た。当時洋館に軟禁されていたのは他に3人。衣食はあっても生活環境は最悪で、その3人が分別を失って自殺したり、勝手に逃げ出そうとして森で迷子になったきり行方不明になったり、病気で耐えきれずベッドの上で死んだりするのを目の当たりにした。ここで生き延びるのは地獄だと思った矢先、小満と同じく記憶を失った人間が数人やってきた。地獄の光景を繰り返さないため、小満は生活用品を届けに来る責任者、コードネームABCの女に頼み込む。もっと生活用品を届けてほしい、自分はここで永遠に生きるつもりだ、外に出ようなんて思わない、新しく来た人間も勝手に逃げ出させない、安心してここで暮らす、と。

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「監獄なのに、楽園にでもするつもり?」コードネームABCは少し嘲笑気味に承諾し、毎月少し多めに物を届けられると言った。ただし金額には限りがある、と。

こうして毎月届く物が増えるにつれ、洋館には快適なソファが、リビングが、図書館が、さらには音楽室まででき、裏庭では花も育て始め、見た目は確かに楽園のようになった。小満はここへ来て記憶を失った奴ら一人一人に積極的に声をかけ、早くこの生活に馴染ませ、さりげなくこう告げる。

「ここは楽園です、勝手に出ないでください。夜は勝手に外に出ないで、昼は必ず時間通りに食事を。」

そういう条件の楽園に男主がやってくる。楽園での毎日、小満がいて、紡がいて、知紗がいて、陸空の双子がいて、それにメイドの灰奈もいて……毎日一緒に笑い合って、自分の過去は分からないけど、ここでの生活は苦しくはない。それでも男主はすぐに好奇心と疑念を抱き始める。

「ここの料理や食料はどこから来るんだ?」 「なんでここで永遠に外に出ずに暮らさなきゃいけない?」 「俺は誰だ?」

ゲームはここから選択肢の連続になる。選択肢の後にまた選択肢、しかも最深で四層の選択肢まである。各ルートが1つのエンディングに対応していて、大半がBad End、Good Endは少し、Happy Endの表記は見たことがない。幾多の苦難を乗り越え、男主はあらゆる死を回避してようやくまともなエンディングにたどり着く。記憶を取り戻し、自分が天才的な兄の事故死をきっかけに狂った両親に見放されてここに軟禁されたことを知る。さらに小満と自分には兄妹らしき関係がありそうだということも。最後に男主は機転を利かせてコードネームABCを見つけ、両親に手紙を届けてもらい、両親に救出される。男主は洋館の中の人間たちとその両親の連絡を取り、救出するのを手伝うと約束し、残された者たちも男主に希望を抱き、自分たちも出られるはずだと信じる……

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以上……

俺は口が多いかもしれないけど、シナリオは確かに単純。男主が記憶を失って監獄に軟禁され、最後に記憶を取り戻して無事に脱出する話。

シナリオ面ではツッコミどころが山ほどある。「どうやって歩いても抜けられない森」って何なんだ、とか、「見た目10歳だけど実は男主と同い年で闇落ちもするし服も作る仕立て屋ロリ」とか、「実の息子や娘を平気で軟禁に送る非情な親」とか。単にこの軟禁組織が存在するって設定自体が馬鹿げてるし、しかも男主は手紙一通で救出されるんだから、お前ら何で必死に男主の記憶回復を阻止してたんだよ、と。シナリオ面の設定に光るところはほぼない……

シナリオはサスペンス方式で、冒頭の不気味な雰囲気の作り方はなかなか良い。でも中盤に入ると、謎解きの内容が冗長になっていく。正しいルートを選んだとしても、男主は自分が出るべきかどうか、過去を思い出せるかどうかで優柔不断に、今日は明日、明日は明後日と先延ばしにして、取り返しがつかなくなるまで全てを思い出そうとしない……

だが、俺が言いたいゲームの面白さはここで発揮される。

このゲームにはBad Endが多い。他のギャルゲーと最大に違うのは、選択肢が出るたびに、選んだ内容が新しいシナリオへと導くこと。他のゲームみたいに、あれこれ選んでも大した意味がなかったり、最後に簡単に「誰が好き?」と聞いて終わるのとは違う。翠の海の選択肢の処理は面白い。特にちょっとした悪意を抱いてるときに。

そう!男主がどう死ぬかを見るってことだ。

最初のプレイで俺は好奇心から夜に外へ出て台所を覗き、得体の知れない奴に殺された……bad end

二回目は学習して覗きに行かない選択をし、知紗に出会って、見たことを知紗に話すと、知紗は自分が知ってることを男主に話し、一緒に逃げようと約束する。二人は恋人を装って夜中に逃げ出す……

その結果、夜中の森で迷子になり、餓死……bad end

その後、別荘である子供が失踪し、俺はその件をとことん追及する選択をした。そしてある夜、男主は得体の知れない奴に殺される、Bad end。

ここまで来てようやく気づいた。このゲームは一貫して一つのことを警告している。

「好奇心を抱くか外に出ようとすれば、お前は死ぬ。」

しかも良心的なことに、一部の明らかな死亡フラグを除けば、このゲームのBad EndはGood Endに劣らない長さがある。他のゲームみたいに選択を間違えたらあっさり死ぬのではなく、とても長いシナリオがあって、最後にようやく不作死就不会死(無駄な危険を冒さなければ死なない)と教えてくれる。

だから選択肢が出たときにどう死ぬか、あるいはどう生き延びて次の選択肢へ進むかを判断するのが、とても面白い。

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「シナリオの制御をプレイヤーに委ねるのは、とても面白いことだ。」中学の頃に『大衆軟件』を読んでいて、ある自由度の高いゲームの制作者がこう言ってるのを見た。正直、生まれて初めてその意味を実感した。しかもギャルゲーで。これは子供の頃テレビで流行った『人生AB劇』にちょっと似ている。視聴者にシナリオの分岐を選ばせ、自分が望む結末へ到達する。結末がグロくてもほのぼのしても、それは自分の選択だ。

翠の海の何人かのヒロインのルートはどれも二つのパターン。男主が彼女を連れて楽園から逃げるか、男主が彼女と永遠にここに残るか。ヒロイン側では主に彼女がここに来た理由を解明する。実は大した秘密もなくて、所詮は家庭の感情問題で、やっぱり根拠が薄弱。でもこのゲームにとっては、選択肢が十分に面白ければそれでいい。もちろん攻略を見ない前提で。

最後に、翠の海の音楽はなかなか良い。曲数は少し少ないけど、バイオリンの旋律は美しいし、同時に恐怖の雰囲気を醸し出す旋律もなかなかゾッとする。

『翠の海』を遊んでいると、高校時代に読んだ天涯「蓬萊鬼話」のホラー小説を思い出した。シナリオ設定はかなり陳腐だけど、サスペンスの作り方は悪くない。でも終盤で謎が解けると、「ああ、なんだ、そんな程度のことかよ」と思う。幸い、翠の海にはあの入り組んだ選択肢と大量のエンディングがあるから、Cabbitの公式サイトが言う「真実の欠片を探すサスペンスADV」として本当に成立している。シナリオだけで勝負する音声付きの読み物ではない。

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だから、シナリオは大したことないけど、確かに面白い。遊びたいなら、攻略は見ないこと。

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