『SINCLIENT』レビュー

世界を救うのは高校生じゃない、口先だけだ

広告

SINCLIENTはBOOST5開発のギャルゲー……ああ、正確に言えばギャルゲーじゃないな。18禁内容のあるビジュアルノベルだ。選択肢も分岐も一切なく、最初から最後まで一直線に進む。

screenshot.582.jpg

広告

ボリュームは長くはないが、決して短くもない。二章構成で、序章とbabylonという本編に分かれている。クリアして思ったことが一つある……

それは、このゲームの序章と本編Babylonがまったく噛み合ってないってことだ。別ゲー……別シナリオ……厳密さで言えば別の水準だ。

序章は主人公の記憶喪失から始まり、少しずつ記憶を取り戻しながら進む。主人公は手元の限られた資料を集め、自分の身元と街で起きている「七つの大罪殺人」事件を調べ始める。ここはテンポが最高で、謎が次から次へと積み重なり、推理と展開に無駄がない。主人公の多重人格ならぬ多重身分も光る。突然二人の彼女がいることに気づいたり、自分が間欠性突発性健忘症の症状を抱えていると知ったり、さらには病院の精神科医に診断され、医者からも記憶喪失の間に二重人格や想像を絶する行動を取る可能性があると言われる。

そして調査が進むにつれ、あらゆる兆候が主人公こそ「七つの大罪殺人」の犯人だと示し始める。学園のADAMカルトと手を組み、自身の体験を元に殺人小説を書き、携帯の連絡先順にターゲットを殺害していく。警察の捜査官からも疑われ監視される。絶望しかけたその時、ようやく誰かが真実を教えてくれる。自分は自称彼女の女に騙され、罠に嵌められたのだと。自身の記憶喪失や間欠的な症状も、彼女が精神科医と結託して薬を盛った結果だ。そして本当の「七つの大罪殺人」の犯人は、その「彼女」だったのだ。

screenshot.387.jpg

序章のラスト、主人公はその女と対峙し、女は警察に捕まる。だがその時、主人公は背後に別の黒幕がいることを知る。自分によく似た男だ。物語はまだ終わらない……。そこで序章終了、OPが流れる。

正直、ここでゲームが終わってくれたら結構高い点を付けていただろう。サスペンスの構築も謎解きも理路整然としていて、テンポも良く、ところどころ予想外の神展開で驚かせてくる……

残念ながら言っただろ、これは序章だって。この後のbabylon編こそが本番だ。

本編が始まるやいなや、大きなニュースがぶち込まれる。主人公の学校のADAMカルトの背後にはさらに大きな組織があり、組織には七賢者がいて、主人公もかつては組織の一員だった。さらに英国の某機関の特工、そして妹までいる……

そして続くのは設定の嵐だ。一つまた一つと降ってくる。主人公が付き合っている真の彼女は日本内閣総理大臣の娘で、日本国土安全部門は米帝CIAと協力していて、英国女王が来日予定で、総理大臣には二人の娘がいて、長女はある事件で死んでいて、七賢者の組織は「21グラム」という殺し屋を雇って総理大臣の娘を暗殺しようとしていて、主人公に似た小さい三つ編みの男は核兵器を日本に輸送して爆発させようとしていて、主人公は毎日学校に通いながら真の彼女と親交を深めていて、学校のADAM教会は学内ネットフォーラムで会員を募集していて……ADAM教会の新入会員に平野未来という父親探しをしている子がいて、平野未来の父親は英国の独立反抗組織の頭目……

screenshot.413.jpg

oh、なんてこった。シナリオを進めている時の俺の頭の大きさが分かるかい?

めちゃくちゃなシナリオが全部混ざり合って、それぞれが勝手に展開していく。ある意味感心するのは、これだけ乱雑に無数の分支シナリオを開け放っておいて脚本家が書き乱れなかったことだ。そこは素直に凄いと思う。でも欠点は明らかで、俺はこれが何をしたいのか全然分からない。主線はどこだ? しかも大部分の展開は主人公と無関係で、主人公は毎日チャットして風呂入って女の子を口説いている。もっと描写されるのは21グラムの殺し屋とあの三つ編み男のアクション……そして奴らが何をしたいのかも分からない。サスペンスを盛るのはいいが、この盛り方だとゲームを閉じて削除したくなる。

あと……シナリオが書き乱れてないとは言っても、ツッコミどころがないわけじゃない……

なぜ日本内閣総理大臣が道端の電話ボックスの電話に随意に出られるのか? なぜ総理大臣の娘は暗殺の脅迫を受けているのに毎日街を歩き回り、しかも喜んで授業を受けに行くのか? なぜ日本国土安全部門は核弾頭を国に自由に進入させられるのか? なぜ日本国土安全部門はCIAにそこまで跪くのか? 米国のパパだから? なぜ外国人が堂々と日本の街中でサブマシンガンを乱射できるのか? なぜ日本の警察は高校生に国土安全部門の協力を頼るほど愚かなのか? なぜ総理大臣は娘が危険に晒されている時に護衛を送らず、高校生に押し付けるのか? なぜ主人公はこんなに凄く、しかも高校生の身元が偽りだと証明されてもなお、時々学校に行くのか? なぜ英国女王は流暢な日本語を話すのか(大嘘)

先日誰かが言ってたろ。現実の国家関係や政治が絡むものは、大体コントになるって。だから少し真面目に読めば、この中二病全開のシナリオが笑えて仕方ない。

まあ、真面目になったら負けだ。これはゲームであって現実じゃない。

そしてシナリオは進むにつれて何度も煙幕を張ってくる。キャラが唐突に裏切ったり、「うわっ」と叫んだ瞬間にその裏切り者が戻ってきて「自分は二重スパイだ」と言い出したり。すぐに仲間も味方暗殺の任務を受けるが、次の瞬間にはその暗殺が却下されたり……。そして立て続けに訳の分からない危機。誘拐あり、生物兵器あり、21グラムが口封じに遭う危機あり、真偽21グラムあり……もう俺の頭はパンクだ……

screenshot.574.jpg

こう書けば神展開は神展開だし、一波三折は一波三折…… だが主線は? 主線はどこだ?

三つ編み男は相変わらずそこら中で問題を起こしている。目的は分からない。そして最後になって……シナリオが突然、脳天をぶち抜いてくれる……

脳血栓の患者に突然「ぱきっ」と血流が通った時のような、あの刺激がたまらない……

すべての黒幕は、内閣総理大臣の早年に死んだ娘だった。この老害は総理大臣になる前、この腐った社会を変えたいと一心に願っていた。だがすぐに娘が脅威に晒される。彼は総理大臣になればこの社会と国を変えられると固く信じ、長女の命を救うことを放棄した。内心では負い目もあった。

しかしこの総理大臣の娘は死んでいなかった……自分は実の父親に捨てられたと思い込み、反社会的になって国への復讐を企む。カルト組織を立ち上げ、七賢者を招集し、ブラックテクノロジーを研究し、身体能力最高の人間、つまり主人公を選び、彼を原型に大量の優良遺伝子を融合させてクローンを作り出す。それがあの叛教者の何とか……ゲーム内の三つ編み男だ。この創り出された存在は、このカルトで語られる「神」に最も近い存在、神の代行者と称された。

screenshot.565.jpg

で、この総ボスが代行者を操ってあちこち走らせて何をさせたかったのか? 日本で大事件を起こし、核弾頭を爆発させ、この世界を燃やし尽くす……実の父親への復讐だ。

そして戦えて計算高くて万能な代行者の助けで計画は順調に進み、横浜は最終的に火の海となった。娘は内閣総理大臣の父親と再会し、父親は娘に深く詫び、最後は代行者にあっさり斬り殺される。そこに主人公が彼女を連れて現れ、ボスと対峙する。妹が姉に嘴炮を浴びせ、姉は心が揺らぐ。三つ編み男はそれに不満で、姉を一刀のもとに斬る……

最後に残ったのは主人公VS三つ編み男。最初は主人公が一方的にボコられ、もうボロボロ……そこに彼女が現れて嘴炮バフをかけ、主人公はボスに向かって嘴炮を始める。三つ編みボスも主人公を嘲笑う:

「俺はこの世界を破壊し、世界の新秩序を創るんだよォ」

screenshot.581.jpg

終わった。大体ボスがこう言う時は死ぬ時だ……

二人は刃を交え、主人公が一閃を決める……ボスは即死。最後は主人公が彼女を連れて天涯を流浪し、行方不明。世界は秩序を取り戻し、カルトも消えた……

END

これで終わり?

つまりBabylon編は、捨てられた娘が無敵のクローンを作って実の父親に復讐する話で、その娘は自分が作ったクローンに秒殺され、クローンがボスになる。

こんなに単純な話なのに、Babylon編の前半には明確な伏線もなく、煙幕シナリオが次々と出てくる。現実ではこういうことは本当にごちゃごちゃかもしれない……

でも現実はクソで、制御不能だ。シナリオを書く側は少なくともシナリオを制御する能力があるんだから、せめて明確な主線を一つは出してくれよ。眠くなるような、頭がこんがらがるような書き方はやめてくれ……

それに、現実がごちゃごちゃだからって、お前もごちゃごちゃに書く必要があるのか? 現実の女の子に超巨乳なんてないだろ……なんでゲームには巨乳ばかりなんだ?

もう少し想像力とロマンを持とうぜ……もちろん国家諜報の部分をコントにしろって意味じゃない。

シナリオ以外では、画面が愛憎半ば……

愛すべきは、主人公と他のキャラの戦闘CGが本当に素晴らしくて、めちゃくちゃカッコいい……

憎むべきは、女性立ち絵が一体なんなんだあれは……

BGMにこれといった亮点はなく、聞ける程度。だがOPとEDは素晴らしい曲で、彩音と真理絵は相変わらず力強い。興味があれば聴いてみてほしい。

実はこのゲームを始めたのは超展開と対決が見たかったからだ。実際、このゲームは俺にたくさんの超展開と対決をくれた。しかも頬を思い切り張られるような超展開と対決を。超展開が行き過ぎるとはどういうことか、対決が一方的すぎるとはどういうことかを思い知らされた。

実は何でも許せる。理解できないのは、最後のボス戦が嘴炮で終わったことだ。いや、嘴炮すらなく、一刀で即死。じゃあ主人公がそれまで三つ編み男にボコられ続けたのは……何のためだ? まさか……また外掛か?

はいはい分かってる。11区のACG向け作品では、これはもうお約束だ。

ボスを殺すのは正義の力じゃない、外掛だ。 世界を救うのは高校生じゃない、嘴炮だ。

本家 plumz.me でこの記事にコメントする

コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。

目次