『夏色ラムネ』レビュー
時々ふと思うことがある。自分は一体どれくらい「地雷ゲー」を遊んでいないのだろう、と。
最近ますます敏感になってきたのか、ゲームの設定を見た瞬間にクソゲーかどうか分かるようになってしまった。おかげで去年の後半からは地雷を踏んでいない……
ただ、どうしても抗えない理由がひとつある。それは絵柄だ。つまり、このゲームの絵柄がえらく自分好みなら、地雷要素のあれこれは目をつぶって、多少のことは許してやってもいいか、と思えてしまう。
実は俺だけじゃなくて、とあるクソみたいなSNSでやったアンケート調査によると、半数以上の人が「キャラの絵はいいけどシナリオが退屈な作品」のほうが「シナリオは面白いけどキャラの絵が受け入れられない作品」よりマシだと考えてるらしい。なにせ顔で判断する時代だし、なにより俺はせせなやうの絵柄が大好きで、彼女が以前関わったゲームはクソ退屈な作品だったけど、今回も迷わず彼女の作品を開いた。たとえX(旧Twitter)で誰かが長画像でこのゲームをゴミだと罵ってたのを覚えていても。
このゲームこそが、『夏色ラムネ』。最初に言った通り、このゲームは地雷……せせなやうがまた地雷を描いてしまった……

日本人が「XX色」で物事を表すのが好きなのは、つくづく感慨深いものがある。桜色、夏色、恋色、春色とか。正直これをどう訳せばいいのか分からないから、大体はそのまま使っている。で、そのラムネだが、日本の漫画でよく見る「ラムネ」、ビー玉で蓋をした炭酸飲料で、たいていの日本人にとって子供時代を象徴するものだ。
実は子供時代、自分も炭酸飲料を飲むのが好きだった。祖母は炭酸飲料工場で働いていて、自分もかなり飲んだものだ。ただ、飲んでいたのは全部王冠を開けるタイプで、日本のビー玉を使うような高級なやつではなかった。

実はラムネってもう現代人にとって若い頃の思い出、正確に言えば「子供時代」の思い出そのものになってる。この「夏色ラムネ」というタイトルが呼び起こすのは、夏休みと子供時代だ。
うん、そう。このゲームのテーマもまさにそれだ。
ゲームは冒頭から、主人公が幼い頃から山奥の村で育ち、よく仲間とある駄菓子屋で買い物や遊びをして、たくさんの楽しい思い出を残したことを描いている。
その後、主人公は大都会へ出て、何年もの月日が流れて故郷に戻ってきた。幼なじみたちはみんな大きくなっていて、それぞれにそれなりの変化を遂げていた……ただ胸が大きくなっただけのやつもいれば、子どもの頃は男の子みたいだったのに、大人になって黒髪に黒タイツの巨乳娘になっているやつもいる。それから、毎日のように宇宙人と会話してると自称する精神病になってしまったやつもいた。

かつての仲間たちはみんな大人になった。主人公もよくそれをしみじみと感じていて、そんなとき子供の頃によく通ったあの駄菓子屋を思い出す……のだが、その駄菓子屋の店主のおばあちゃんの体調がどんどん悪くなっていて、挙げ句の果てにはおばあちゃんの体の都合で店まで畳むことになってしまった。
男主と仲間たちは考えた。このままだと駄菓子屋がヤバい。これはマズいぞ、と。そこで仲間たちは意気投合し、よし一緒に動いて、おばあちゃんの駄菓子屋を存続させようじゃないか、となった。
「いやいや……他を当たってくれよ。謙遜じゃなくてな、お前らまだガキなんだよ。未来は明るいんだから、こんな年端もいかないのにここで駄菓子屋なんて開いちゃダメだろ?」
おばあちゃんは最初は断っていたが、その後、主人公たちのしつこい説得に根負けして、承諾した。

そもそもメインストーリーはこうだ。故郷に帰って、老工業基地を復興させる……おっと違う、小売店の復興だ。子供時代の思い出を守るってわけ。
ところがこのゲームには攻略可能なヒロインが四人いて、ヒロイン筆頭・坂下弥生のルートだけがどうやら「売店の活性化」に関わるらしい。他のキャラはもう完全に方向性がずれている。なぜ知ってるかって?俺がまさにそのずれたルートを歩んだからだ。
このゲームの選択肢分岐は最初からあって、ほとんどが三択で、その時点の画面に対する主人公の好感度を表す形になっている。三つの選択肢のニュアンスをざっくり訳すと、だいたいこんな感じだ:

「1、この娘いいな、好きだ。」 「2、この娘は普通だな。」 「3、失せろ、次行こう。」
なのでほぼ全ヒロインにこの選択肢で一通り聞いたあと、ゲームはルートに入れる。頼りは選んだ好感度だ。

正直なところ、この好感度がどういう計算なのかは俺にもわからん。ゲーム内で金髪のほう(山崎加奈子)が中二病全開の発言を連発していて、暇さえあればそこに突っ立って宇宙から外星人の信号を受信してるとか言い出すんだよ。俺が選んだ選択肢は全部、彼女を嘲笑うか、バカじゃねえの的なやつばかりだった。
最後なのに俺は彼女の√に入っちまった……
皮肉にもほどがある。
それで彼女のルートに入ってからも、実は男主にたいしてほとんど告白なんてしておらず、二人は相変わらずじゃれ合っているだけ。ただ彼女が一方的にドSと化して、自分から男主に近づき、先に男主と寝てしまう。

ベッドインしてから、彼女はようやく主人公に付き合ってほしいと切り出した。そこで主人公も、自分は彼女のことが好きだと告げる。
刺激、刺激すぎる。
先に車に乗ってから切符を買うゲームも少なくない、それくらいならまあいい、なのにこのゲームは突然画風が一変…………迅雷耳を掩うに及ばずの勢いで、俺の口にうんこを突っ込んできた。

ヤバい、マジでヤバすぎる。
ゲームは加奈子√の後半、主人公が神社で祈っている彼女を見つける。祈っている最中に加奈子が突然小さな女の子の姿になり、一瞬で元に戻る。その直後、主人公はこの加奈子がまるで記憶を失ったかのように、話し方も子供そのもので年齢にまったく合っていないことに気づく。意識が子供時代のまま止まっているような感じだ。
そして数日後、加奈子はどうやら元に戻ったようだった。

主人公は首をかしげて、それから調べ始める。たどり着いたのは、この加奈子には二重人格があるらしいってこと。ひとつは少女じみた、とても臆病な人格。もうひとつは大胆で、物言いもストレートな人格——つまり最初にあらわれたあの姿だ。
最後はどうしようもなくなり、加奈子自らが男主に真相を打ち明けた。
加奈子は子供の頃、男主と一緒に遊んでいて、男主のことが好きだった。その後、男主がこの村を離れることになったとき、加奈子は引き止めたかったけど、恥ずかしがりで臆病な性格のせいで言い出せなかった。男主が去ったあと、彼女はひどく後悔して、山の向こうにある湖を探し当てて、願いをかけた……
「とてもオープンで大胆で勇気のある人になりたい」と願ったら、なんとその湖には本当に神様がいて、彼女の願いを叶えてくれた。
で、その願いが叶う方法って何だったのか?
要するに、加奈子の身体からもう一つの人格をクローンして、その人格は「オープンで、明るくて、勇気がある」、その人格で元の人格を置き換えたんだ。元の人格は身体のどこかにまだ存在しているけど、目覚めていないだけ。
この新しい「オープン」な人格を得て、加奈子は大人になった姿そのものになった。非常によく喋り、子供の頃のように恥ずかしがることもなく、さらには自分から主人公を落としている。
しかし加奈子の本来の人格はというと、まだ彼女の体のどこかの隅に丸まっていて、時々ひょっこり顔を出すけれど、その認識は幼児レベルにとどまっている……

つまり、この神様が「偽の加奈子」を作り出して加奈子の身体に詰め込み、偽物に彼女の本来の脆さを偽装させていたってわけ。神様が作った加奈子だから、当然宇宙からの何かのメッセージも受信しちゃって、だから精神病みたいに見えるって寸法だ。

普通のゲームなら、この展開は「本物の加奈子」が呼び戻されて、偽物は去り、彼女の偽装を助けるのをやめて自分を取り戻す。そして男主も見捨てず、Happy End を迎える——そうなるはずだ。
だがこのゲームのヤバいところは、その常識をぶち破ってくることにある。
男主は、自分が加奈子の二重人格の問題を解決するのを手伝うつもりだと言い、それでまたあの願いを叶える神様のところへ行った。
願いの結果は……幼い加奈子が犠牲になって……今のこの大人びた……open な加奈子が残った。
つまり、本物はいらない、主人公は偽物を選んだというわけだ。
偽物が台頭して間もなく、突然消えることになった。理由ははっきりしている。「私は偽物で、本物を基に作られた。本物がなくなったなら、私も消えるしかない」

男主はなかなか承知しなくて、神様にどうやって偽物を残すのかと尋ねたんだが……
答えは簡単だ。補魔だよ!

そして男主はすぐにズボンを脱ぎ、この偽物の金髪とセックスを始める。確か男主は仲間たちと一緒に神様に会いに来たはずなのに、衆人の前でズボンを脱いでセックスとか、お前はまるで竹の如くヤバい Hardcore だなとしか言いようがない。
最後の結末なんて、兄貴のケツ穴で考えたって分かるわ。主人公はこの偽物ヒロインと永遠に暮らすことになって、周りの連中は祝福しまくり。「ヒロインが自分を取り戻して」「主人公と結ばれた」だってよ……

なのに誰も触れていない。本当は幼い頃からずっと主人公を好きで、勇気が出なくて願い事をしたあの小さな女の子、加奈子が、永遠に犠牲にされてしまったということを。
男主は自分の幸せを手に入れたけれど、偽物を選んで本物を捨てた。それがどうしても受け入れられないし、脚本の論理すら理解できない。
例えば、お前が重慶出身のコーラ好き・黒タイツ好きのデブでキモいオタクだとしよう。黒タイツのお姉さんとエッチしたいけど、自分は何もかもダメだと思ってる。そこで神様に願い事をする。「かっこよくてキモくない自分にしてほしい」と。すると神様は「かっこよくてキモくない」もう一人のお前を作り出す。お前はただ指をくわえて、「もう一人の完璧なお前」が好きな黒タイツのお姉さんを口説き、そのお姉さんとエッチするのを見ているしかない。そいつは「もう一人のお前」だけど、やっぱりお前じゃない。
お前はやっぱり何もないのか……
お前が手に入れたのは、「もう一人のお前」が「今のお前」をNTRした結果にすぎない……パンパンもナンパもお姉さんも黒タイツも、元のお前には何の関係もない。
だから夏色ラムネの金髪ルートはそこで気持ち悪いんだよ。
だが、このゲームのキモいところはこれだけじゃない。
まずゲームのシステムだが、バグだらけ。タッチスクリーン対応がイマイチなのはまだいいとして、セーブに至っては Title に戻ってから終了しないと、なぜかセーブデータが消える。保存されたのを確認したはずなのに、ゲームを閉じて再度起動するとやっぱり消えている……これのせいで何度もゲームを早送りするハメになった。

それに加えてBGMと演出がとにかくチープで、切り替えは唐突だし曲も単調で、すぐに飽きる。
ゲームのCVも似たようなものだ。橘まおは歌がうまくて見た目もいいが、単調な声は何年聞いてもまったく変わらない。花影蛍は最近話題の新人(?)だというのに、声は秋野花がデビューした頃のレベルで止まっていて、萌え声しか出せない。歩サラが演じるこのキャラは完全に手抜きで、給料をもらったらさっさと帰っただけって感じだ。
で、一番クソなのが加奈子のCV。名前はよく知らんが、たぶんみたかりんだ。正直に言うわ、この人の声はマジで耳が破壊されるレベルで不快すぎる……少女を演じてるのに、45歳の中間管理職のオバサンみたいな声になってる。たぶん監督が「二つの声を使い分けろ」って指示したんだろうな。一つは子供時代の少女ボイス、もう一つは大人になった(まあ高校生のままだが)声。で、うっかり大人の度合いが行き過ぎて、ああなったわけだ。

ゲームの主旨は「子供時代の遊び相手が大人になって駄菓子屋を守るために奮闘する」というものなのに、実際には大半の時間で駄菓子屋の経営にはほとんど触れていない。ヒロイン1号のルートでなければ、なおさら何の関係もない。退屈なBGM、退屈な会話、退屈なCV、そして最後にわけのわからないクソ展開を食らわされる。1本のルートを終えても、次のルートに進みたいという気持ちはまったく起きなかった。そんなとき、ふと目に入ったのがこれ……
「このゲームを最後まで読み切った人は、正直マジでヤバいと思う。」
あー、やっぱり俺はまだまだ強くなれてないな……総じてこのゲームはツッコミどころが多すぎる。特にあの体調の悪いおばあちゃん、どこが体調悪いのか全然分からんし、そもそも小さな売店を開いてるだけなのに体力なんてどれだけ要るんだよ。カウンターに座って王者栄耀でもやりながら毎日過ごせばいいじゃん?
ただ、このゲームに良いところがまったくないわけじゃない。OPがめちゃくちゃいい曲で、映像もなかなかだ。だが……所詮はOPだけ。このゲームに過剰な幻想を抱いているなら、OPだけ見て、あとは脳内でシナリオを妄想して心にしまっておくのをおすすめする。
女主人公のメインルートはもう進みたくない。というのも、女主人公のルートはX(旧Twitter)で叩かれていたのを覚えているからだ。女主人公にはそれなりに好感を持っている。その好感は心の奥にしまっておこう。
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