『星織ユメミライ』レビュー

星織ユメミライ:影のもう一面

広告

世界は暗い。だが、それだけで光の存在を否定する理由にはならない。

そんな奴を知っている。知り合ったきっかけはやはりネットで、会った当初からこいつは凡庸だと思っていた。どう言えばいいか、その凡庸さは、話はできるけど飛び抜けたところが感じられない、反抗的な個性もなければ人と争うこともなく、いつもニコニコしているように見えて、これといった主張もない。かといって無知なわけでもなく、いろんなことを知ってはいるが、これといって精通しているものもない。

広告

こいつは人生に情熱のかけらもないんじゃないかと思うことがある。でも、ずっと楽しそうなのだ。

将来何がしたいのか聞いたことがある。プログラマーになりたいと彼は言った。「すごいソフトを書くってこと?」と聞くと、彼は否定した。「それができれば一番いいけど、まあ何かを作って誰かの問題を解決できればそれでもいい」と少し間を置いて、「コードを書くのが好きなんだよ。子どもの頃にほとんどの奴がブロック遊びが好きだったのと同じ感じで」と続けた。

それから彼とは連絡を取らなくなった。話していても退屈すぎたからだ。何を言っても受け止めるだけで、自分は平凡な人生を淡々と送り、何かを企てようともしない。大物や凄腕というのは偏執的で狂熱的で、頭が一本気なものだと思っていた。そんな奴は、人混みに放り込んだら見つからなくなる類の人間だ。

だが年月が流れ、ネット越しに無数の大物が立ち回るのを見、何人もの凄腕の曲折した人生の曲線を見てきた。彼らはいろんなことのために奔走し、何かを得ては何かを失った。そこでようやく気づいた。情熱のかけらもないあの男のほうが、かえって一番幸せな人間になっていた。

彼は大学を無事卒業し、そつない成績で有名とは言えない企業に入り、数年後にはもっと大きな企業へ転職した。月給は悪くない。しかも大学時代に仲のいい彼女も見つけ、今では時々海外にも出かけ、その収入で自分の車と家も買った。もう人生の勝ち組そのものだ。

だが以前と同じで、ネットで彼のプロジェクトなんて見つからない。GitHubも使わないし、オープンソースに熱心でもない。ネットで長々と自分の意見を語ることもない。でも実際には仕事をきちんとこなしていて、それでもやはり誰も彼の存在を知らない。ネットでIDを検索すれば名が知れている「有名人」に比べれば、彼は空気同然だ。

でも彼は車も家も女もあって……金もある。おまけに本人はご機嫌だ。

今の彼の計画は起業らしい。成功を祈る。ただ彼の性格からすると、たぶん……うまくいくと思う。

そこでようやくわかった気がした。人生の軌跡は必ずしも波乱万丈である必要はない。穏やかな路線も一つの選択なのかもしれない。大概、私たちは社会の暗さや人間の醜さ、世界の不公平を嘆き、穏やかな人生路線は自分には縁がないと思い込む。そんなに運のいい奴がいるはずがない、幸運児は架空の世界にしかいないと。

冒頭で言ったように、暗闇の中にいるからといって、それで陽光の存在を信じるのを拒んではいけない……

心が陽光を向いている人は、多かれ少なかれ陽光の恩恵を受ける。穏やかな人生を求めることも、自分を陽光に浴させながらゆっくりと強くしてくれる。

そして星織ユメミライが語るのは、とても穏やかな物語だ。

screenshot.684.jpg

星織ユメミライの物語はシンプルで、これまでプレイした多くのギャルゲーとは似通ったところがない。むしろ集大成と言っていい。学園恋愛と人生の後日談という二大要素を融合させ、さらに若者が成長の過程でぶつかる様々な問題の悩みと解決法を大量に織り交ぜている。人生の教科書的ギャルゲーと言っても過言ではない。

人生の教科書?ギャルゲー?笑えるだろ?

ゲームは冒頭、主人公が故郷に戻って転校するところから始まる。幼なじみや学校の生徒たちと出会う。同時に主人公にはもう一つ目的があった。建築を学んでいる彼は、憧れの建築家・我妻先生に弟子入りしようとしていたのだ。

当然、弟子入りは我妻先生に明確には受け入れられない。主人公は意気軒高で、我妻先生と一緒に大仕事をやってのけたいと、自分の成果を早く見せて認めてもらいたいと焦る。我妻先生は首を振る。

「若い人はこの年齢で若い人らしいことをやるべきだ。君には才能があるかもしれないが、今しかできないことがたくさんある。卒業してからこういうことを学ぶほうが、今すぐ学ぶよりずっといい」

「でも……卒業したら遅いじゃないですか」

「私は34歳で建築の世界に入ったんだ。大器晩成でね。それまではいろんなことをやってきて、建築とは無関係だった。でも建築設計の道を歩き始めたとき、それまで積み上げた『無関係』な経験が、かえって多くの回り道を避けさせてくれた。つまり、君の人生経験はいつも多くの貴重な財産をもたらしてくれる。だから……君はまだ学生だ。学校生活をちゃんと楽しむべきだ。そうしないと、君にとって大きな欠落になるよ」

マジで理にかなってるだろ!目からウロコすぎるだろ!

かくして主人公は我妻先生の助言に従い、学校の生徒会で働き始め、知り合った女の子(ハーレム)と様々な活動をする。やがて七夕祭が開催されることになるが、天文部と超自然科学部は七夕祭に参加しないという。主人公は天文部の部長・逢坂空を説得しに行き、すぐに彼女が変わった面白い人物だと知る。

彼女はよく無表情で話すが、空の星には明らかな狂熱を抱いていて、天文や星象の話になると滔々と語り出す……

そして主人公とは幼い頃の邂逅もあり、といろいろあって主人公は逢坂空に恋をし、告白しようとする……

ここの告白の描写がすごくリアルだ。主人公は夜、家で寝返りを打ちながら、「逢坂空は自分に好意を持っているのか」を考えて眠れない。さらに逢坂空は学校の人気者でよく告白されていると聞き、主人公は自信をなくし、相手にされないんじゃないかとためらう……

マジでこの描写最高だし我が心に響きすぎる

最後は主人公と逢坂空のさらなる交流の中でようやく告白する。逢坂空は数日悩んだ末に自分の気持ちを理解し、受け入れる……

そこからは長時間の日常デート。一緒に七夕祭のプロジェクトを作る。挫折もあるが、主人公は決して諦めない。段ボールの観測小屋は強度が足りず、主人公はサッカーボールの構造を思い出す。これも我妻先生に褒められる。同時に主人公は逢坂空を諦めないよう励まし続ける。ここの主人公の性格が本当にいい。自分の彼女の前で「どうしよう」という顔を見せたことがなく、いつも成算があり頼りがいのある感じを与える。知っての通り、誰にでもどうしていいかわからないときはある。そんなとき一番必要なのは、自分にどうすべきかを教えてくれる人、いわゆる「頼りになる奴」だ。

screenshot.680.jpg

天文部の七夕祭プロジェクトは最後にようやく成功し、逢坂空と主人公は星空の下で互いの想いを語り合う。ここでゲームは終わりかと思った……

だが間違っていた。

すぐに物語は主人公の就職後へと切り替わる。卒業した主人公は無事に我妻先生の事務所に入り、仕事への真剣さでいくつかの賞賛も得る。逢坂空もプラネタリウムの解説員になる。そこで主人公は自分の人生の軌跡を考え始める。このまま事務所で働き続けるのか?それとも新しいことを試すのか?

主人公は彼女の逢坂空に意見を求める。彼女は落ち着いた様子で言う。 「あなたの夢はクリエイターになることでしょう。クリエイターがすべきことは新しい時代を創ること。あなたの師匠も革新的な作品で成功したのよ。時代を創ることは失敗するかもしれないし、すべてを失うかもしれない。でも失われないものがたくさん残る。あなたが何をしても、私は応援するわ」

screenshot.690.jpg

すぐに主人公は起業を選び、師匠の我妻先生も主人公を支持する。だが起業はそんなに甘くない……

最初の仕事、次の仕事、次々と問題が起きる。主人公は問題解決のために徹夜を続け、やがて体が持たなくなる。

逢坂空はそれに気づき、仕事を辞めて主人公の起業を専業で手伝いたい、そして結婚したいと申し出るが、やんわり断られる。

「プラネタリウムの仕事はあなたの夢でしょう。自分のことであなたの夢を足枷にはできないし、結婚であなたをやりたいことから遠ざけることもできない」

最後に主人公は困難を乗り越え、会社も地盤を固める。ある休暇に、主人公は逢坂空を学校へ連れて行く。

二人は最初に出会った屋上に戻る。初めて会ってからもう11年……

このとき主人公はすでに事業を成し遂げ、正式に逢坂空にプロポーズする。逢坂空は感激して涙を流し、承諾する。

「空のたくさんの星の中から私を選んでくれてありがとう」

ルートは真のEndを迎える。

screenshot.693.jpg

正直、このルートを終えてかなり深く心を動かされた。このルートの人生路線があまりにも穏やかでリアルだったからだ。これまでのギャルゲーのように、主人公が陰謀に巻き込まれたり、中二病の少女に出会ったり、節操なくハーレムを作ったりするのとは違う。このルートが描く主人公は、現実に出会うある種の人を思い出させる。冒頭で言ったように。

このゲームの物語は誰かの実際の感情経験に基づいて書かれたんじゃないかと思うことがある。あまりに写実的だから。ただ、物語の方向としてはやはり明るい路線が選ばれている。主人公は困難に決して屈せず、仕事に努力を続け、学校でもすべてに真剣だ。

しかも女を追うときの図々しさが半端ない!

実際、主人公のような奴にはさほど主人公補光もない。大半の大学生にとって、真面目に物事をやり、イキりを抑え、図々しさを持てば、大体主人公の路線を歩める。少し運も要るかもしれないが、よほど運が悪くなければほぼ間違いない。

逢坂空のルートを終えた後、他のルートをやる気力がもう残っていないと感じた。評価によれば小野涼子が声を当てた律佳が一番人気で、他も大同小異。いずれも学校生活→人生の軌跡という路線で、淡々とした写実スタイルを貫き、比較的完成度の高い純愛物語を作り上げている。

純愛と言えば……まあそうか。ゲーム内のHシーンは十分多く、逢坂空一人だけで11個のHシーンがあるが、それも物語の純愛を損なわない……若いんだから、恋愛すれば当然エッチもする……

ゲームシステムは可もなく不可もなく、絵柄も萌え寄りの写実で、絵師は頑張っているが少し慣れない。恋泉天音が描いた二人は某抜きゲーを思い出させる……でもそれは問題ではない。

screenshot.611.jpg

ゲームシステムにはスマホもあり、触れる。ただし機能は大したことがなく、できるのは写真撮影、つまりスクショだ。ゲーム内のLINEの表現も面白い。こういうのがちょっとした見どころだ。

screenshot.625.jpg

暗い系、架空系、妄想系のギャルゲーをかなりやってきたが、星織ユメミライという写実寄りの純愛作品は、かえって自分に大きなダメージを与えた。一つのルートを終えると二つ目をやるのが怖くなったほどだ。自分の人生の軌跡を思い返し、主人公と比べると、本来なら歩けたはずの道が、いくつかの出来事でずれてしまい、最後には運命の悪戯や世界の不公平のせいにしてしまうことがある。

もちろん後悔しても仕方ない。ゲームの中で我妻先生が言うように、それまでの人生の積み重ねは、いつも後にやるべきことのために貴重な財産をもたらしてくれる。

英語にこんな言葉がある。There’s always a way. 人生に袋小路はない。

私はいつも負のエネルギーを撒き散らしながら、同時に人に伝えている。世界は暗いけれど、心は光明を向くべきだと。

光があれば影がある。影の中にいても、この暗がりのもう一端に光があることを忘れないように。

いわゆる生活の希望とは、たぶんそういうものなのだろう。

本家 plumz.me でこの記事にコメントする

コメントは中国語の本家サイトで受け付けています。このミラーは閲覧専用です。

目次