『バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~』レビュー
バタフライシーカーというゲームが今年の初めに発売されて、じゃあ下半期には、バタフライシーカーのファンディスクを名乗る『バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~』が出たわけだ。
普通、本編がそこそこ売れたらFDが出るし、本編がイマイチでもFDが出たりする。エロゲー制作はそこまでコストが高いわけじゃないから、声優がちょっと大変なだけで、あとはコピペみたいなもんだ。金になるなら出さない手はない。バタフライシーカーのブランドの他の作品を見る限り……(そう、あの景の海のアペイリアのことだ)、FDってのは大体ただの小芝居で、本筋とはあんまり関係なくて、質も本編以下。本編で攻略できなかったキャラの話を入れてくるか、ただの中身のない話か……
要するに、金稼ぎの作品で、売ってるのは思い入れだけ。期待する方がおかしい。
ところが、この『バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~』はマジで驚かせてくれた。

まずタイトル。バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~、英語でButterfly Seeker: Chaos Nightmare。中国語だと「寻蝶者,混沌梦魇」。物語は独立しておらず、原作の直後を描く続編的な位置づけだ。

原作では、主人公が最後に市長の子供たちの共犯事件を解決し、殺人犯である姉の濡れ衣もいくらか晴らした。主人公は姉の出所を待つと言っていて、まあ物語としてはほぼ終わっている。FDも最初はそのとおりで、各キャラのその後が語られる。主人公の先輩・氷室千歳は進学して捜査科に進み、主人公と後輩たちは学校に残って「昆虫美食部」を維持し、警察に協力して自分の能力でオカルト捜査をやっている……
そうしたらゲーム開始早々、新事件が飛び込んでくる。連続絞殺事件だ。

ざっくり言うと、女性が三人、相次いで喉を切られて殺され、一週間後に遺体を遺棄された。死んだ女性にはみんな、簡単には落ちない赤いボールペンのインクが付いていて、最後に死んだ女性には赤いインクだけでなく、体に記号のようなものが残されていた。記号は日本語のカタカナっぽく見えるのに、はっきりとは読めない……
主人公が調べると、三人の女性には怪しい点がいろいろある。主人公のButterfly Seeker能力で三人の死因の映像を探ると、見えたのは……まったく同じ光景だった。
みんな、ドアノブに手を置く手。ただし三人の映像に映っているのは、それぞれ自分自身の手だ。

間違いなく言えるのは、この三人があのドアを開けなければ死ななかったということ。
でもその「ドア」はどこにあるのか?
主人公たちが頭を抱えていると、調査が少し進展する。ただ、進展の仕方が不気味だ。三人の被害者に新しい共通点が見つかる。
彼女たちは殺される前に、近親者や知人が死んでいる。母親、妹、そしてセフレ。死因は自殺や交通事故の類で、殺されたわけではない。

主人公は被害者の知人たちの髪を集めて、また能力で死因を調べる。結果はまたしても予想外だった。
その人たちの死因の映像には、みんな女の子が出てくる。白い髪で、リボンをつけた……
やがて主人公はその子が学校の後輩、音無凜子だと気づく。
まさかこの後輩が、あの人たちを死なせたのか? 主人公たちは彼女を呼び出して、探りを入れる。あの被害者の知り合いか、と。
ところが後輩の話を聞くと、むしろちょっと同情してしまう。

後輩いわく、一人目はアイスを食べているところにぶつかられて、相手の服を汚してしまい、仕方なく高いワンピースを弁償した。
二人目は、買った限定のおいしいやつ、すごく並んだやつを、相手の紙袋と並べて置いたら、相手に間違えて持って行かれた。
三人目は、酔っ払ったおじさんを見かけて、駅で降りるよう声をかけたのに、おじさんは感謝もしなかった。
要は後輩に悪意はなく、当たり屋に遭ったか、親切が誤解されたか、運が悪かったか。よく見ても、あの人たちの死と何の関係があるのかわからない。事件はまたしても袋小路に。
すると今度は、探られた後輩・音無凜子の方が、主人公たちに疑いを持つ。
「あなたたち何なの? なんで私がどこでアイスを食べたとか、おいしいものを買ったとか、駅でおじさんに声をかけたとか知ってるの?」
主人公ははぐらかす。すると後輩は怒り出し、自分は利用されたか尾行されたと感じて、双方が衝突する。押し合いの中で後輩が主人公の体に触れ、主人公はとっさにButterfly Seeker状態に入る……つまり、普段死者の生前の映像を遡るのに使うあの空間だ。その空間に、なんとあの後輩もいた。
後輩もその空間で主人公を見て、二人の体が離れると、空間は消えた。

主人公はこの後輩が只者ではないと感じ、後輩も主人公に何か隠し事があると感じる。
主人公は仲間を連れて後輩を調べ始める。すると彼女の人生もまた悲惨だった。
後輩・音無凜子には姉がいた。音無凉子。姉は化粧品の販売員で、姉妹は何かの理由で両親と揉めて、二人とも家を出ていた。姉は結婚する予定だったが、ある日、妹の音無凜子が帰宅すると、姉が親友を殺して遺体を遺棄しているところを目撃してしまう……
その場面を見てしまった音無凜子も、血まみれの姉に見つかり、姉がすぐに口を封じようと襲いかかってくる。音無凜子は気を失う……目が覚めたとき、姉は失踪していた……

そのまま六年。今もって消息はない。
話を聞いた主人公たちの探査班の先生は、その六年前の事件を知っていた。大学の女友達の荻原(名前は間違ってるかも、覚えてないからこう呼ぶ)、もともと役者志望で演技科が得意だったのに、卒業後はなぜか捜査科に入り、潜入捜査を専門にしていた。まあ、これも別の意味の演技だけど……

その荻原がその事件で失踪した。最初に現場に駆けつけ、音無凉子に襲われ、二人まとめて行方不明になった。今も居所はわからない。
警察の六年前の事件の見立てはこうだ。音無凜子の姉・音無凉子は、同級生が自分の婚約者にちょっかいを出していると疑い、同級生を殺害。その後、帰宅して現場を見た妹の口も封じようと襲いかかったが、駆けつけた捜査科の警官・荻原と殴り合いになり、最後は二人とも失踪した……
そして調べると、音無凉子の婚約者とは誰か。ヒロインの一人、天童優衣の主治医であるカウンセラー、相良だった。主人公は天童優衣と一緒にその医者を訪ねる。医者は昔のことは残念だが他に言うことはない、自分も被害者だと語る。

逆に天童優衣は、この医者が何かを隠していると感じる。しかも心に「暗い部分」があると。もちろん直感で、証拠はない。
そこへ、大学に進学した先輩・氷室千歳が戻ってくる。大学で金髪の女と知り合った、新しい友達だと言う。ただ、その友達は時々気分が変わりやすい……

というわけで事件はバラバラ、手がかりゼロ、めちゃくちゃだ。
連続絞殺事件。死んだ人間のそばには必ず、親族や友人が不審死している。
その不審死した人たちは死ぬ前に、学校のあの女の子・音無凜子と接触している。だがその接触は親切な行為ばかりで、悪意はない。
同時にその女の子自身も、六年前の事件に関わっている。その事件で二人が失踪し、一人が死に、今も未解決だ。
これらに何の関係があるのか? どんなつながりがあるのか? 最後になってようやく、事件は少しずつ真相を明かし始める。
真相が明らかになるのは、先輩・氷室千歳からだ。氷室千歳は大学で仲のいい友達ができ、よく一緒に食事をしていたが、ある日、その人がいつもと違った。元々辛いものが好きだったのに、その日は辛いものを食べて怒り出し、しかも右手で箸を持っていたのに左手に変わった……
氷室千歳はその友達に理不尽に怒鳴られ、まったく理解できない。「まるで別人みたい」

一方、主人公はまた刑務所に姉を訪ねて助言を求める。姉は事件の話を聞いて、いくつか質問を投げかける。
後輩の音無凜子があの被害者の友人たちと関わった後、その友人たちが不審死しているのなら、考えてみなさい……
もし「音無凜子」があの人たちと接触しなかったら、あの人たちはどうなっていた?

- 音無凜子が接触しなければ、ある被害者の親族の服は汚れず、音無凜子に高いワンピースを弁償させてそれを着て帰ることもなかった。
- 音無凜子が接触しなければ、ある被害者の親族は音無凜子の袋を間違えて持って帰ることもなく、自分が買うはずだった食べ物を持ち帰っていた。
- 音無凜子が接触しなければ、ある被害者の友人は電車を乗り過ごし、翌日は二日酔いで出勤できず、客にも会えず、セフレにも会えなかった。
ならばそこから推論すると、もし音無凜子があの人たちと接触していなければ、あの人たちは不審死しなかったのではないか?
音無凜子の行動が、バタフライ効果のようなものを引き起こし、間接的にあの人たちの死を招いたのではないか?

さらに面白いのは、なぜ音無凜子がそんなに巧みに「バタフライ効果」を引き起こせたのか。
主人公の追及と問い詰めの末、音無凜子は自分も「Butterfly Seeker」能力者だと認める。ただ彼女の能力は主人公と違い、主人公は他人の遺品に触れて「過去」の被害者の死に関わる映像を見るが、音無凜子は他人に触れて「未来」の可能性の影響を見ることができる。
音無凜子は失踪した姉への想いから、自分が見た映像に従って一連の行動をとった。あの三人に会ったのもその一つで、それが三人の死を招くなんて思わなかった。
最後に主人公は音無凜子を説得し、姉の体の髪などを持ってきて、姉がどこに行ったのか、死んだのか生きているのかを探らせる。能力で探った結果は驚くものではなかった。音無凜子の姉、音無凉子はもう死んでいた。そして主人公が彼女の死の映像で見たのは、最近のあの人たちと同じ、やはり一つのドア……そして開かれた手。
つまり、音無凉子も最近の連続絞殺事件と同じく、犯人は同一人物で、あのドアを開けたから死んだのだ。
そこで音無凜子は主人公に姉の状況を話す。姉の最期の数日のこと。音無凜子の姉は病院の相良という医者と結婚する予定だった。ところが音無凜子は街でその医者を見かける。姉の婚約者なのに、姉の別の女友達と親密にしていた。音無凜子は姉に告げ、その男と話をつけろと言うが、姉は信じない。音無凜子は怒って家を出て、戻ったときには姉が友達を殺して遺体を遺棄している現場を目撃した。

だから推測できる。音無凜子の姉は婚約者の浮気に気づき、その浮気相手を殺して逃げたのだ。
しかし音無凜子は、自分が見た姉はおかしかったと言う。姉は表向きはきらびやかなOLだが、家に帰ればめちゃくちゃダメな人で、料理も下手……妹の音無凜子が世話をする必要があるほどだった。ましてや包丁を手に人を殺すなんて。
しかも音無凜子は家で、姉が自分で作った唐辛子入りの料理を全部捨てていたのを見つけた。姉は普通そんなことはしない。
そこで主人公たちは、音無凜子の姉の最後の異常な反応と、先輩・氷室千歳の話を結びつける。どちらも周りの人がおかしくなり、唐辛子を嫌うようになった……
先輩・氷室千歳は、先生が話していた失踪した荻原という同級生を思い出す。変装と化粧が得意で、音無凜子の姉と一緒に失踪した……もしかして誰かが周りの人を偽装しているのではないか?

そこから仮説と推理が始まる。誰かが偽装しているなら、多くのことが説明できる。
まず絞殺事件。全員が死亡から一週間後に遺棄されている。つまり犯人は遺体を保存する場所を持っていて、検死の結果、死亡時刻がどれも曖昧だった。誰かが意図的に遺体をしばらく保管してから捨て、正確な犯行時刻の推断を避け、アリバイを作っている。
同時に主人公は気づく。絞殺された三人には共通点があった。それは極端に孤独で、他人との接触が少ないこと。死んだ親族や友人は、彼女たちが唯一接触できる相手だった。母親、妹、セフレ……そして先輩・氷室千歳の同級生も、一人暮らしで他人との付き合いが少なかった。
だから仮説。誰かがこの三人を殺そうとし、まず彼女たちを誘拐・殺害。同時に誰かを彼女たちに成り済まさせ、しばらく生活させる。周りにはまだ生きていると思わせ、時間が経ってから遺体を捨てる。証人も、その人がいつ死んだのか証明しづらい。ずっと前に死んでいるのに、その前は確かに生きていたように見えた……偽物だけど。

だから殺された三人がみんな一人暮らしで社会との接触が少ない人なら、成り済まされやすいのではないか? でも何のために? 彼女たちの親族や友人はなぜ死んだのか?
そこで誰かが仮説を出す。親族や友人の死は、被害者に成り済ました人がボロを出し、口を封じるために殺したのではないか?
つまり、被害者が先に死に、被害者の親族や友人が後に死んだ。だが成り済ましと遺体の遺棄を遅らせることで、「被害者の親族や友人が先に死に、被害者が後に死んだ」という偽の印象を作り、同時に犯人にアリバイを与えている?
被害者の親族や友人の死は、音無凜子が接触してすぐだった。だから音無凜子の行動が、成り済ました人にボロを出させたのかもしれない……
調べると案の定だった……
音無凜子はある人にお詫びとしてワンピースを買った。だが本当の被害者は肩に傷があり、成り済ました人にはない。帰宅して親族に会うとすぐ疑われ、口を封じられた。
音無凜子はある人と買い物袋を取り違えた。だが実際に持ち帰ったお菓子は別の味で、本当の被害者はそれが大嫌いなのに、成り済ました人は大喜びで食べていた。親族に見破られ、口を封じられた。
音無凜子はある人を起こして、電車に乗り遅れないようにし、翌日も遅刻しなかった。そして翌日、その人はまた被害者とセックスし、服を脱がせたところ本人でないとバレて、成り済ましは失敗。口を封じられた。
音無凜子の行動が、たまたま成り済ました人のボロを出させ、元の計画を失敗させ、口封じしか選べなくした?

つまり、犯人は最初、あの一人暮らしの女三人を殺し、その後誰かに成り済まさせてしばらく生活させ、検死官の犯行日の推断を攪乱するつもりだった。ところが音無凜子の出現で予想外のことが起き、関係者三人を別に殺すしかなくなった。
ここまで来ると、成り済ました人が誰かはもう明らかだ。音無凜子が六年前に見た自分の姉も、本人ではなかったかもしれない。自分を「姉」が殴って気絶させた後、真っ先に現場に駆けつけたあの「荻原」警官の嫌疑が最も大きい。

なぜなら主人公の先生が言っていた。大学時代の後輩で、変装と扮装が最も得意だったと。失踪した六年間、ずっと犯罪者の殺人を手伝っていたのかもしれない。
同時に、他人への扮装が得意な荻原は、少しずつ主人公のチームに紛れ込み、先生に成り済ます……もちろんこの話は長いので省略。最終的な推理結果を話そう。
推理の最後の後押しもやはり主人公の姉だった。「青ひげ」というヒントの言葉で、事件の性質を主人公に伝える。
最後に警察が、音無凜子の姉の遺体が発見され、死亡時刻は六年前だと告げ、ついに黒幕が相良医師だと確定する。すべては六年前から始まっていた。
相良医師は音無凜子の姉・音無凉子と恋に落ちた。音無凉子は妹の指摘で婚約者の浮気に気づき、抗議しに行く。それが相良医師の恨みを買い、彼は彼女を排除しようとする。
誤って姉を殺してしまった後、相良医師はどうしていいかわからない。そこへ、相良医師に密かに恋していた荻原が現れ、一計を授ける。
まず音無凉子の遺体を隠し、変装が得意な荻原がしばらく音無凉子に扮する。しばらくしてから遺体を捨てれば、犯行時刻は推断できない。

ところが荻原が音無凉子に扮しているとき、あの浮気相手の同級生が挑発しに来て……本人でないと気づかれ、口を封じる。
口封じの後、機転を利かせた荻原はわざと遺体を隠して音無凉子の妹・音無凜子に見せ、姉が同級生を殺したと信じ込ませる。
同時に荻原自身も駆けつけた警察に扮して失踪し、殺人犯に脅されて殺されたように見せかける。
こうして二人は失踪し、音無凉子の遺体は相良医師に隠された。
その後死んだ何人かの女性も、手口は音無凉子とほぼ同じ。ただ、すべては相良医師の個人的な心理異常によるものだった。
相良医師の心は歪んでいた。彼は女を信じず、女はみんな嘘つきで約束を守らないと思っていた。しかし女は大好きで、次々と女を口説き、次々と口説いた女に裏切られ、自分は道徳の高みに立って「女は嘘つきだ」と言い、殺す。
主人公の姉のヒントによると、最後に死んだ女の子が残した情報は「あおひげ」。つまり青ひげ、藍髭だ。
『青ひげ』は有名な童話で、しかもかなり暗い。青ひげの王がいて、非常に裕福で、王妃を娶り、こう言う。「わが城のすべての部屋は開けてよい。ただ一室だけは決して開けてはならぬ。開けたのがわかれば、そなたを殺す」
青ひげの妻は好奇心に耐えられず開けてしまい、中には青ひげの元の王妃たちがいた。みんな好奇心で開けて殺されたのだ……そして今の王妃も殺される運命にある。
だからこの医者も童話『青ひげ』と同じだ。付き合う女すべてに言う。「家のあるドアは絶対に開けるな。開けたら殺す」

そして後の三人の女はみな約束を破り、そのドアを開けた。ドアの後ろには仕掛けがあり、開けると赤いインクが吹きかかり、洗っても落ちない。相良医師はそれに気づき、「女はみんな嘘つきだ」と叫んで殺し、荻原にしばらく成り済まさせてから遺体を捨てる……
死んだ三人の一人暮らしの女はみなそうで、だからこそ主人公が見た死の映像は、どれも死者がドアを開ける場面だった……
音無凜子が見た未来の光景は、確かに「姉を殺した犯人」の妨害に関係していた。ただ残念ながら、彼女の行動は荻原の殺人の順調な進行を変えたが、他人の命も巻き込んでしまった。
そして相良医師が最も殺したかったのは、ほかならぬ荻原だった。荻原は六年間相良医師を手伝いながら、相良医師が言う「開けてはいけないドア」を一度も開けなかった。相良医師は焦っていた……釣りで言う、餌を撒いても釣れないときの焦りに似ている……

最後に、荻原はやはり好奇心からそのドアを開けてしまう。相良医師が突然現れる。
「何年待ったか。ついに俺を裏切ったな。殺してやる!」
主人公ももちろん犯人に気づき、間に入ってあの変態医師を始末する……犯人は逮捕される。
で、その医者のドアの後ろには何が隠されていたのか?
実は医者の母親の装束と、いろんな女装だった。つまりこの医者はマザコン? でもマザコンとはちょっと違う。まあ精神病だろう。この秘密を見られたら、女には好かれないだろうな。

もしかするとこの医者は最初、自分のマザコンと自意識過剰な女装趣味を隠すために、秘密を知った人間を殺していたのかもしれない。だが後に、彼はもうその秘密を気にしなくなり、あのドアを餌にして他人を誘い、自分を裏切らせ、殺人の口実を作るようになった。後日談で主人公が言うには、相良医師が最も殺したかったのはこの荻原で、前に殺した三人は本意ではなく、荻原の好奇心を刺激してあのドアを開けさせるためだった。
童話『青ひげ』と同じで、本当に取って代わる王妃はこの荻原で、前に死んだ六人はただの脇役にすぎない。
事件解決後、音無凜子は自分が主人公を好きだと気づき、主人公が寝ている間に体に触れて、一緒にButterfly Seekerの仮想世界に入り、そこでエッチなことをした。主人公は春夢だと思っていた……二人は結局何も起こらなかった……

だから主人公は最後まで後輩に片思いされただけで、真愛はやはり姉。物語はそれで終わる。筋はだいたいこんな感じで、細部は覚えていないから、間違いがあればゲームが正しい。
とはいえ、このゲームには恋愛要素がほとんどなく、ただの捜査物語で、最後のエッチシーンはかなり唐突だ。HCGを見たいオタクの需要を満たすためだけかもしれない。
まず全体として、バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~は事件が一つしかないものの、その一つの事件の出来が本編のどの事件よりも上だ。始まった瞬間から巧みな布石が敷かれていて、あれこれの手がかりがそれとなく散らばっていく。手がかり同士にはまだ大した繋がりがない。中盤になっても全部がバラバラのままで、後半に入ってようやく、無関係に見えた出来事が少しずつ繋がり始め、最終的に一つの大きな事件になる。語りはリニアではなく、むしろ実際の捜査に近い。事件の解決には必ず突破口があって、そこに到達した瞬間に全てが腑に落ちる、というのは認めざるを得ない。

しかも突破口は空から降ってくるわけじゃない。すべては「仮説」から始まる……。バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~のFDの事件では、その仮説とは「誰かが被害者になりすましている」というものだ。大胆な仮説だが、根拠がないわけでもない。ゲームの冒頭で男主の先生が、自分の後輩は演技と変装が得意だと話していた。その後、捜査中に失踪するという話も出てくる。似た伏線は他にもたくさんあって、その多くはCGの中にまで隠れている。なりすましている人物が右利きだとか、CGをじっくり見なければどこからが偽物でどこまでが本物なのか気づけないとか。そうした大小の伏線が、最後にはすべて回収される。

ただ欠点もある。注目すべきは新ヒロインの音無凜子で、実は彼女こそ男主と最も相性のいいヒロインだ。同じ性質の能力を持っているだけでなく、能力が互いを補い合っている。男主が見るのは「過去」、彼女が見るのは「未来」。理論上なら二人にはもっと火花が散るはずだ。だが、男主が本編で姉コンの仲になっていることを考慮したのか、FDでは男主の可哀想な姉を緑にしてやろうとはしなかったのか、新ヒロインは片思いということにされてしまった……可哀想に。こんなに萌えるヒロインなのに。
ゲームはFDだが、立ち絵の多くも旧版のままだ。しかし新しい背景や新しいCGがたくさんあり、前述の通りCGそのものが手がかりになっているものも多い。新しいOPもある。ただし映像としてのOPはなく、この「新OP」はただの音楽プレイヤーにすぎない……

端々でコストを削っているところはあるが、ゲームの中核となるシナリオがとにかく面白すぎるので、このFDは予想を超えた高評価だ。そして普通のFan diskの範疇を超えていて、むしろDLCに近い。
ゲームの最後で音無凜子が言っていたのを覚えている。姉が失踪した後でこの未来を予見する能力を得てから見える未来は、どれもはっきりしているのに、どこか長い悪夢のように感じた、と。ゲームのサブタイトル、Chaos nightmareとも呼応している。男主に出会って初めて、音無凜子の混沌とした悪夢は消えて散った……

ただ残念なことに、男主は筋金入りの姉コンなので、この子を救うことも幸せにすることもできない。僕は画面の向こう側で、この可哀想なやつを見てため息をつくしかない……
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