『絆きらめく恋いろは -椿恋歌-』レビュー
ポンコツ妖刀録
『絆きらめく恋いろは』は発売当時、これといった亮点がないように見えたのに、最終的な売上は意外なほど良く、しかも……評価も高かった。
評価が高いのはゲーム本編がどうこうというわけでも、ヒロインの女一号の造形がどうこうというわけでも、あのメインシナリオがどうこうというわけでもない……
ひとえに女二号、つまり椿というキャラが可愛くて萌えるからだ。
で、その椿のルートが何かというと、本人は一族最大の栄誉と資源を持ちながら、ゼロから成り上がった連中にことごとく叩きのめされ、最後はかろうじて尊厳を保っただけ。こんな筋書きのどこが褒められるんだって話だが、それでも大衆は椿を可愛くて萌えると感じ、そのルートで俺が唯一いいと思った心理描写や努力と奮闘のあれこれは完全に無視された……
トニカクカワイイ、要するに可愛ければいいのだ。
ふざけんな! またか! またか! シナリオが萌えに負けた!
そして今回は萌え勢に配慮して、このゲームはファンディスクが出た。主役は元の主役ではなく、ルートも元のルートではなく……椿だ。
タイトルも『絆きらめく恋いろは -椿恋歌-』になった。

で、このゲームはファンディスクとしてどうなのか。
まあまあ、といったところ。

本編の椿ルートの続きを書いた形で、どうやら原作のTRUE END部分の劇情はなく、妖刀に関する内容もかなり無視され、男主と椿が恋人になってからの展開で話が進む。
朱雀院椿の一族に謎の妖族が現れて朱雀院家に復讐すると言い出し、しかもその妖族は復讐の対象を朱雀院の老人たちではなく、朱雀院家の娘たちだと明言する。

朱雀院家の娘たちといえば……当然朱雀院椿に行き着くわけだが、実は朱雀院家にはもう一人娘がいる。朱雀院椿の姉、朱雀院都子だ。彼女は一族と決裂したらしく、学園で身分を隠してメイドをやっている。
そんなとき学園に突然転校生がやってくる。カグヤという紫髪のロリ。この転校生は来るなり凄腕オーラ全開で殺気に満ちており、狙いは当然、学園で次に開かれるタッグ戦、要するに2対2の小規模な対戦だ。そしてこの大会で椿は以前因縁のあった葵と組み、謎の転校生カグヤは学園最弱の緑毛と組んで、緑毛に一本の刀を渡し、「この刀があれば誰にでも楽勝で勝てる」と言う。

もちろんその刀はろくでもない代物で、いわゆる妖刀。人の心を操るのだが、緑毛は手に取ってみると自分が急に強大な力を得たことに気づき、学園の強豪たちにも楽に勝てるようになる。何試合かこなすうちに緑毛も舞い上がり、自分はヤバいと勘違いし始め、この奇妙なチームはそのまま連勝して決勝まで進み、椿のチームと対戦する。
決勝が始まると、椿はすぐに異変を察する。相手が強すぎるし、自分は大きな妖気に惑わされているのか、体にも不調が出てくる。

しかし緑毛は妖刀を持っていても結局は雑魚。神装備を持っても雑魚は雑魚で、最後は椿と葵に敗れる……審判は椿のチームの勝利を宣言するが、相手のカグヤは納得しない。
「これで終わり? 相手を殺してこそ勝利じゃないの?」
そしてカグヤはそのまま捨て台詞を吐き、朱雀院椿を始末すると宣言する。最初から彼女が狙いだったのだ。そして消える。
その夜、街は異常に包まれる。カグヤが何かの儀式を発動し、妖気が街全体を覆い、街には様々な幻影が現れ、閉じ込められた椿たちを追い回す。

そこで学園の教師(前作で朱雀院家の先祖だという白狐)が男主と椿たちを救い、真相を説明する。
1、カグヤは朱雀院家が昔うっかり打ち出した妖刀だが、この刀は心を操り人を血に飢えさせるため、封印された。 2、その刀は封印されたことで朱雀院家を恨み、最近は人型にまで成り上がって妖怪となり、朱雀院家への復讐を始めた。 3、カグヤの復讐の方法は朱雀院家の娘を殺すこと。ゆえに朱雀院椿が標的になった。 4、現在、街と学園は妖気に覆われ、異世界の結界になっている。カグヤを倒すにはいくつかの要所を突破し、この結界を破壊してからでないとカグヤと対峙できない。
そこでその場にいた者は三手に分かれて結界を破壊し始める。
まず朱雀院椿の姉、朱雀院都子が和泉桜夜を連れて一路へ行き、幻影の大軍をすべて倒す。次に千石葵と藍原しおんが精神を操られた緑毛を倒す。最後に朱雀院椿と男主が直接Bossに挑む。

ここの戦闘には大きな見どころがある。それは朱雀院都子と幻影の戦いだ。
朱雀院都子は朱雀院家のかつての後継者だけあって、戦闘力は妹よりはるかに高い。幻影を相手に、彼女は……なんと一人で25体相手にしてみせた。
しかも戦闘力ほぼMAXで、この人は強さがおかしい。彼女の勝利を妨げる唯一の方法は刀の耐久が足りず折れることくらいで、そのとき姉貴はそのまま大量の武器を取り出してUnlimited Blade Worksを発動する。

一緒に参戦した相棒の和泉桜夜はまったく存在感がない。そもそも彼女が手を出す必要がなく、朱雀院都子一人で全部片づけてしまい、しかも殺紅眼でほぼ一人で百人相手。
和泉桜夜はさらにこんな間抜けな質問までしている。
「どうやったらあなたみたいに強くなれるの?」

もちろん姉の朱雀院都子が大暴れしたことで結界は直接破壊され、朱雀院椿が最後にカグヤと対峙するときも楽になる。
最後は当然まず口論で、カグヤは自分も朱雀院椿と同じ、朱雀院家の道具だと語る。利用価値がなくなれば捨てられるのだ。
カグヤは一本の刀として打ち出された後、朱雀院家が求めるものではないと分かると、そのまま冷宮に放り込まれて顧みられず、朱雀院椿も同じで、一族の代表として大会に出て、恥をかいたら差し替えられる……ある意味では確かに両者は同じだ。

だが当然こんな口論は無効で、最後は朱雀院椿が覚醒してBossを倒すことになる。それには男主も加わり、二人でイキってみせる。
ここに細かい点がある。朱雀院椿はBoss戦で「朱雀院家の血筋にしか使えない火炎能力」を使い、この絶体絶命での爆発能力によってようやくBossに大きなダメージを与える。一方、先ほど朱雀院都子が一人で大群を斬り倒したときは、この能力すら使っていない……姉の朱雀院都子がどれほど強いかが分かる。

姉の強さはゲーム前半でも語られていて、カグヤが挑発するときも、朱雀院都子が現れるのを見るとそのまま撤退している……
もちろん姉はヒロインでもファンディスクの主役でもないので、最後は朱雀院椿がBossを倒すことになる。

最後は当然Bossが倒され、朱雀院椿とBossは相互理解に至り、Bossは原型の一本の刀に戻り、朱雀院椿が使うことになって、おしまい。
ゲームもエンディングへ。
つまりこのゲームは、朱雀院家に捨てられた妖刀が人型に化け、朱雀院家の娘・朱雀院椿に復讐しに来て、最後は倒されて懐柔される話だ。
ゲームに大きな劇情の起伏はなく、緑毛の惑わしと堕落にしても、馬鹿でなければ結末は分かる。シナリオが悪いとも言えないが、あまりにもテンプレで、前を見れば後ろの展開が分かる、凡庸なだけだ。ただ先日あのLASS社の精神的続編の前半よりははるかにマシで、少なくとも最後まで読める。
音楽面は特に言うことはない。新しいOSTはほとんどなく、旧作の使い回しばかり。立ち絵も旧素材が多く使われている。もちろん特殊イベント用の特殊CGもあり、妖気を発した朱雀院椿の獣耳形態なども含まれる。そして当然、各種エロCGも新規で用意されている。予想通りなので繰り返さない。

ファンディスクとして「プレイヤーに非常に丁寧に奉仕する」点はしっかりやっていて、大量の脇役と主役のHCGを用意している。前後関係もなく、ただエロ画像を売るためだけのものだ……しかも「すべてのエロ画像をワンクリックで解放」する機能まであり、ゲームをしなくてもオナニーの邪魔はしない。全力でオタクに奉仕している。
声優については特に言うことはない。卯衣が演じるヒロインは確かに見事だが、俺はどこか違和感を覚える。つまり「嘘くさい」。こんなキャラは現実には存在しえないし、聞いていて妙に感じる。たぶん俺が結婚して現実的になったせいだろう……ただ大半のオタクには殺傷力は大きいんだろうな。

ゲームには最後に「結婚END」がある。Title画面左下のBrideをクリックすると、短い後日談に入り、男主と朱雀院椿の結婚式のようなものが語られる。CGを二枚出して、あっさり終わる。

全体として、このゲームはファンディスクとして十分合格。少なくとも単にエロ画像を売るだけではなく、一応筋の通った話も描いている。一番突っ込みたいのは、これが朱雀院椿のファンディスクで、一族の妖刀を降伏させる話なのに、最も戦闘力が高いのがヒロインではなく、朱雀院椿の姉・朱雀院都子だということ。この話の中でヒロインの朱雀院椿は相変わらず物語を盛り上げきれず、どちらかといえば萌えを売るお嬢様の立ち位置で、この作品でゲームの激しい部分を支えているのもやはり彼女とは関係ない。姉の朱雀院都子の戦闘シーンは本当に優秀で、一人で大群を斬り倒し、しかもUnlimited Blade Worksの細かい描写には非常に興奮した。このゲームで最も良いと思った部分だ……

あとは……もう見慣れたのか、可もなく不可もなく、こんなものだ。むしろゲーム名を『ポンコツ妖刀録』に変えたほうが似合うかもしれない。ヒロインがポンコツすぎる……姉頼みだ。
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