回想シーン

『千恋*万花』レビュー

学生の頃、「ソフトウェア工学」という授業があった。講師はおばさんで、インドと日本のソフトウェア業界をやたら持ち上げ、授業の合間にだらだらと長々と語り出す。だいたいの内容は想像がつくだろう。「標準」への厳格な準拠だの、「モジュール化」による「高凝集・低結合」だの。中には明らかに誇張で、吹いているとしか思えない話もあった。 「インドのソフトウェア業界はとても発達していて、プロのプログラマーが書くコードは百人が書いてもみんな同じ形。とても標準的で規範的で、コメントまで同じなんです。」 「標準化と規範化が進めば進むほど、様々な要件に対して積み木を組むように素早くソリューションを出せる……」 「標準化が実現した前提では、誰もが部品のように、効率的に素早く回っている……」 どんどん話が神秘的になり、吹牛成分が増していった。というのも、その授業で俺はいつも遅刻して最前列に座らされていて、そのおばさんがやたらと俺に質問してくるもんだから、時々言い返していた。 「そんなのプログラミングしてて退屈すぎません? みんなロボットみたいじゃないですか。」 「これが効率ってやつよ。大企業が素早くソリューションを出すための効率。個性を出したければ自分で独立してやりなさい……」 まあ、この手の話は学生時代にはなんとなく分かった気になっていて、「標準化」と「流れ作業」みたいなものは確かに効率的なんだろうな……と思っていた。でも働き出してから、国内の中堅・中小ソフトウェア会社(インターネット企業ではない)にいくつか触れてみて、俺が当時言い返した言葉もまあまあ筋が通っていたことに気づいた…… そこの連中は本当に退屈で……作るものも退屈で……でも確かに「使える」。 流れ作業でも問題は解決できる。でもいつも情熱と面白みに欠ける気がする。色気がない…… まあ、仕事に色気なんて要らないよな。でもゲームとなるとそうはいかないだろ…… ゆずソフトの去年のゲーム『サノバウィッチ』は悪くないと思った。ただあと一歩足りない……寧々ルートの書き込みが特に薄かったのが問題で、他に大きな不満はなかった。だから今年の新作『千恋*万花』が発表された時、最初の反応はやっぱり失望だった……