『星織ユメミライ』レビュー
世界は暗い。だが、それだけで光の存在を否定する理由にはならない。
そんな奴を知っている。知り合ったきっかけはやはりネットで、会った当初からこいつは凡庸だと思っていた。どう言えばいいか、その凡庸さは、話はできるけど飛び抜けたところが感じられない、反抗的な個性もなければ人と争うこともなく、いつもニコニコしているように見えて、これといった主張もない。かといって無知なわけでもなく、いろんなことを知ってはいるが、これといって精通しているものもない。
こいつは人生に情熱のかけらもないんじゃないかと思うことがある。でも、ずっと楽しそうなのだ。
将来何がしたいのか聞いたことがある。プログラマーになりたいと彼は言った。「すごいソフトを書くってこと?」と聞くと、彼は否定した。「それができれば一番いいけど、まあ何かを作って誰かの問題を解決できればそれでもいい」と少し間を置いて、「コードを書くのが好きなんだよ。子どもの頃にほとんどの奴がブロック遊びが好きだったのと同じ感じで」と続けた。
それから彼とは連絡を取らなくなった。話していても退屈すぎたからだ。何を言っても受け止めるだけで、自分は平凡な人生を淡々と送り、何かを企てようともしない。大物や凄腕というのは偏執的で狂熱的で、頭が一本気なものだと思っていた。そんな奴は、人混みに放り込んだら見つからなくなる類の人間だ。
だが年月が流れ、ネット越しに無数の大物が立ち回るのを見、何人もの凄腕の曲折した人生の曲線を見てきた。彼らはいろんなことのために奔走し、何かを得ては何かを失った。そこでようやく気づいた。情熱のかけらもないあの男のほうが、かえって一番幸せな人間になっていた。