柚子
2年ぶり、年始からの一連の予熱を経て、日本のギャルゲー界の雄・ゆずソフトがついに今年のフルプライスR18正統派新作『ライムライト・レモネードジャム』を世に出した。Jamはジャムにもバンドのライブにもかかる言葉で、中国語名はだいたい「スポットライトとレモネードの演出」といったところ。全員ちょっと予想外だったのが、今回まさかのガールズバンドものだということだ。
発表から発売までゆずらしさ全開で、間隔も空かず、しかも今どきの「超大作」ならまず出さないオンライン無料体験版のダウンロードまで先行公開してくれた。ここはゆずに感謝したい。オフライン体験会もやらなければ、KOLを飛行機とホテル付きで呼んで事前にヨイショさせることもせず、淡々と伝統的な宣伝を進め、発売も当然延期なし。成熟したプロジェクト管理の香りがぷんぷんする。
俺の過去のブログを読んだことがある人なら分かると思うが、俺は別に「ゆずソフトアンチ」ってわけじゃない。ただ、熱烈な信者でもないってだけだ。
これまでのゆずソフト作品に対して、俺はずっと抑えめの批判的なスタンスを取ってきた。『天色』の頃はゆずソフトは廃萌だと言い、『魔女』の頃は「もうちょい真面目にやれ」と言い、『千恋万花』の頃は「テンプレすぎる」と言い、『Riddle Joker』とあの名前すら覚えてない全年齢作品の頃にはもう「ゆずソフト終わったな」と嘲笑い始めていて、『死神の蝶』の頃には完全に「やらかした」と言っていた。
「ゆずソフト」の作品に対して自分がかなり否定的なのは見ての通りだ。内心では同業の中でも優秀な部類だと思っているのに、それでも自分が求めているあの「点」には届いていないらしく、作品への「称賛欲」が湧いてこない。
気づけば2023年、ゆずソフトは生き残っていて、今も1〜2年に1本のペースで新作を出し続けている。今回のタイトルは『天使騒々』。正直、めちゃくちゃダサい。あの頃の『天神乱漫』っぽいStyleを感じる。特にゆずソフトのゲーム紹介を読んだ後は、本作はゆずソフトが「原点回帰」した“寝そべり”作品だとほぼ確信した。
年初に知人から、今年ゆずソフトが新作を出すと聞いていた。
そして先日、本当に発表された。ただ予想外だったのは、それが全年齢作品だったこと。ゆずソフトは子ブランド「ゆずソフト Sour」、つまり「酸っぱい柚子」を立ち上げた。まあ柚子は元々酸っぱいだろ、というツッコミは置いておく。
何より重要なのは今回発表された作品、『Parquet』。
多くの柚子厨は新作がまさかの「全年齢」と聞いてメンタルをやられたようだが、俺は別にいいと思った。柚子には物語をちゃんと語る力がある。少なくとも『千恋万花』は良かった。あの低レベルな「発情」や「売肉」テーマを捨てて、シナリオ重視に舵を切るのもアリだ。叙事と演出がしっかりしていれば、これを機に大きく方向転換するのも悪くない……
もちろん、「叙事と演出がしっかりしていれば」、だが。
で、このゲームは実際「しっかり」しているのか?
これまでずっと柚子の大コケを期待してたんだけど、困ったことに柚子のゲームはどれも安定していて、なかなかコケない。制作工程がほとんど流れ作業だからだ。
ゲームのテーマ設定を一つ決める テーマに沿ってキャラデザを固める シナリオライターに話を分担させ、各エピソードを書かせてつなぎ合わせる 宣伝を開始、毎日カウントダウンアニメを公開 キャラソンを公開、さらに宣伝 キャラソンの曲をRemixしてゲーム内のOSTに流用 ゲーム発売 しかも柚子のゲームは絵師がほぼ固定なので画風は保証付き、声優も実力のある人ばかり。遊んだ後に「地雷」だと感じることはまずない。せいぜい「シナリオが普通」「話がテンプレすぎ」「設定がちょっと幼稚」と思う程度で、飛び抜けてはいないが、決して悪くはない。
こうした品質が「不合理な鋼の柚信者」を大量に生んできた。以前SNSでRiddle Jokerのシナリオが知恵遅れだと書いたら、Telegramまで追いかけられて「ぷんぷん」と言わんばかりに絡まれたことをなんとなく覚えている。柚子のゲームの魔力がどれほどか分かる。ただ柚子のゲームの特性上、ファンの年齢層は低めで、未成年も少なくない。Twitterで未成年がYuzu liveに行こうとして断られ、メンタルをやられた投稿を見たこともある。だから僕は「ゆずソフト」に対して愛憎半ばなんだ。
好きな理由は、確かにギャルゲーの基準の一つだし、いつも好きな声優を起用してくれるから、 嫌いな理由は、ずっと流れ作業で萌え豚の餌を生産していて、革新がないから。
柚子に革新がない影響は柚子自身にとどまらない。新作を出せば年度販売数1位というカルト企業が、流れ作業のままで楽に稼げるなら、他社も真似するに決まっている。全ギャルゲー会社が柚子みたいになったら、業界は本当に終わる。
でも今年の柚子はどうやら本当に何かが違う……
しかも大コケした……
2010年ごろ、大学最後の学期。就職先はすでに決まっていたけど、卒業が近づいていて論文の答弁を済ませなきゃいけなかった。
論文を書いた具体的な過程はもう忘れた。ただ、論文を書いているときがあまりにも退屈で、ネットでアニメを探し始めたことだけは覚えている。
アニメを探していたらAcfunでやたらと流行っているネタ動画を見つけて、その元ネタをたどっていったら『とある魔術の禁書目録』にたどり着いた。今振り返るとツッコミどころは多いけど、当時の自分にはかなり面白く感じられた。
面白いのはその設定で、科学超能力と魔術師の戦い、そして主人公はまさに第三者的な存在。
もっとどうかしてるのは、その「第三者」のはずの主人公が一番強いってところ。話の展開もテンプレそのもので、突然ボスが現れて主人公を倒すと言い出し、主人公が口先でまくしたてて一発ぶん殴ってボスを殺し、男はそのまま相棒になり、女はハーレム要員になる……
もちろん『禁書目録』を見終わったあと、その番外編、つまり有名な『とある科学の超電磁砲』もついでに見た。
正直に言うと、『電磁砲』のストーリーは『禁書目録』よりずっと面白い。内容の大半は魔術と関係なく、超能力者の話だ。主人公は戦闘力がそこそこ強い超能力者で、仲間たちといろんな事件を解決していく。能力者の能力暴走だったり、闇に潜む犯罪問題だったり。
『超電磁砲』が面白い理由は、やっぱり話とキャラ設定がよりイカしてるからだと思う。
学生の頃、「ソフトウェア工学」という授業があった。講師はおばさんで、インドと日本のソフトウェア業界をやたら持ち上げ、授業の合間にだらだらと長々と語り出す。だいたいの内容は想像がつくだろう。「標準」への厳格な準拠だの、「モジュール化」による「高凝集・低結合」だの。中には明らかに誇張で、吹いているとしか思えない話もあった。
「インドのソフトウェア業界はとても発達していて、プロのプログラマーが書くコードは百人が書いてもみんな同じ形。とても標準的で規範的で、コメントまで同じなんです。」 「標準化と規範化が進めば進むほど、様々な要件に対して積み木を組むように素早くソリューションを出せる……」 「標準化が実現した前提では、誰もが部品のように、効率的に素早く回っている……」
どんどん話が神秘的になり、吹牛成分が増していった。というのも、その授業で俺はいつも遅刻して最前列に座らされていて、そのおばさんがやたらと俺に質問してくるもんだから、時々言い返していた。
「そんなのプログラミングしてて退屈すぎません? みんなロボットみたいじゃないですか。」
「これが効率ってやつよ。大企業が素早くソリューションを出すための効率。個性を出したければ自分で独立してやりなさい……」
まあ、この手の話は学生時代にはなんとなく分かった気になっていて、「標準化」と「流れ作業」みたいなものは確かに効率的なんだろうな……と思っていた。でも働き出してから、国内の中堅・中小ソフトウェア会社(インターネット企業ではない)にいくつか触れてみて、俺が当時言い返した言葉もまあまあ筋が通っていたことに気づいた……
そこの連中は本当に退屈で……作るものも退屈で……でも確かに「使える」。
流れ作業でも問題は解決できる。でもいつも情熱と面白みに欠ける気がする。色気がない……
まあ、仕事に色気なんて要らないよな。でもゲームとなるとそうはいかないだろ……
ゆずソフトの去年のゲーム『サノバウィッチ』は悪くないと思った。ただあと一歩足りない……寧々ルートの書き込みが特に薄かったのが問題で、他に大きな不満はなかった。だから今年の新作『千恋*万花』が発表された時、最初の反応はやっぱり失望だった……
ゆず(柚子)のゲームはそんなに多くは遊んでいない。指折り数えてみても『天神乱漫』と『夏空カナタ』くらいで、あとはだいたい「ああ、柚子ね、あの顔見たことあるわ」で終わってしまう。それでも柚子には感謝しないといけない。『天神乱漫』は俺が最初に触れた18禁関連のゲームだ。遊んだのはPSP版だけど、それまでプレイしてきたのはEver17やMO2、MO4みたいな真・全年齢ものばかりだったから、初めて千歳佐奈のHSを脳内補完したときはちょっとドキドキしたのを覚えてる……
咳咳、ちょっと話がそれた。実際、ゆずソフトのゲームにはそれなりに思い入れがあるんだが、ほとんど遊んでいない。理由の大半はあちこちで人にdisられて、「ゆずは廃萌だ」とか「抜きゲー化が進んでる」とか聞かされたからだ。実際、ゲームの設定を見てもその通りで、後のヴァンパイアしかり天色先生しかり、実用性の特徴がどんどん際立っていく。そして2014年末、『サノバウィッチ』という新作がバーンと飛び出してきた。ゲーム紹介なんて何も見てない、目に入ったのは「発情」の二文字だけだった……
さらにゲームのあらすじを見てみると……おいおい……これ、完全に節操を捨てたんじゃないか?ヒロインが定期的に発情して、それを男主がこっそり目撃して、そこから二人で展開していくストーリー…………ヤる以外に何があるんだよ?
これは実用派の勝利、シナリオ派の号泣。俺としては設定をチラ見した時点で全然興味が湧かなかった。
ヒロインをヤるだけの設定かよ、脳内でいつでもミニ劇場を上演できるわ。どれもこれより精彩じゃん。わざわざゲームやる必要あんの?
だが後に体験版をやってみると、全然そんなことはなく、発情はただの見せかけで、話の本体はなかなか良かった……もちろん、体験版の話だが。製品版をクリアした今なら、このゲームについていくつか真面目に語るべきことがあると思う。