水葬銀貨のイストリア

『水葬銀貨のイストリア』レビュー

『紙の上の魔法使い』というゲームへの愛着と、そのシナリオライターであるルクルへの賛辞を、俺は何度も隠さずに語ってきた。ルクルが『紙の上の魔法使い』の前に出した『運命予報をお知らせします』も含めて、このシナリオライターの凄さは本当に物語を語るのが上手いという点にある。紡ぎ出される物語はテンポも会話も、使われる言葉や文体まで、どこか優雅で引き込まれる雰囲気を纏っている。それに比べると、他のギャルゲーのシナリオライターが書く話は高校生の中二病が爆発したようにすら見える。この落差はしばしば、ルクルのゲームを遊んだ後に他の主流なギャルゲーをやると、後者の会話が馬鹿馬鹿しくてアホらしく感じられ、前者こそが物語であり映像が浮かぶのだと思わせる。これがシナリオライターの持つ「実力」というやつなんだろう。 『紙の上の魔法使い』以降、ウグイスカグラという会社はあまりにも長く沈黙していた。1年以上前にTwitterで新作をちゃんと制作していると呟いた後、2016年末に新作『水葬銀貨のイストリア』が公開され、2017年初頭に体験版がリリースされ、そして3月に一切の延期もなく発売された。幸せはあまりに突然で、ゲームが出た瞬間にすぐさまプレイ開始だ。(正規版を買いたいが、普通の転送業者を使うと税関にお茶を濁されるんじゃないかと心配で、詳しい人にルートを教えてほしい)

めと音楽CDアルバム:ファーストインプレッション

ひとつ心残りがある。『紙の上の魔法使い』のゲームにOSTが発売されなかったことだ。 ゲームからOGG形式のOSTを抽出することはできるが、それはロスレスじゃない。実は自分でも一式抜き出したんだけど、tagに名前を打ち込むのが面倒で放置している。ずっとこのゲームはOSTを出すと思っていたら、ご存知の通り、何年も経って次回作が出るというのに、前作のOSTはまだ音沙汰なしだ。 ゲームの作曲者はめと。実はこの作曲家と脚本のルクルは初共演というわけではない。記憶が正しければ『運命予報をお知らせします』のBGMも彼だし、『紙の上の魔法使い』も彼、そして来月発売の『水葬銀貨のイストリア』の作曲者もやはり彼だ。 意図的なのか何なのか、ルクルとその仲間たちが関わったゲームはどれもOSTを出さない。『運命予報をお知らせします』ですら、当初は特典としてOSTを付けると言っておきながら、発売前にあっさり削除された……そして『水葬銀貨のイストリア』も特典で主題歌『アズライトの棺』が付くだけだという。 なので興味本位で作曲者めとの個人サイトを覗いてみたら、彼は実際ずっと音楽制作を続けていて、サイトで自分の作品のCDも販売していた。ならばパッケージ版を買って支援しようじゃないか、というわけだ。 (何枚かCDが紛れ込んでいるのは気にしないでください)