自殺
物語の冒頭、主人公は社畜として生活と上司の重圧に毎日押しつぶされ、死にたいという思いを抱く。日本人が大好きな駅のホームで、やってくる電車を前に飛び降りようとする。
ふわりと飛べば、人生から完全に解放される。
もちろん、主人公にそんな度胸はなく、結局は惨めに生き続ける。そんな彼の心が極限まで沈んでいたとき、一人の少女に出会う。彼女は混浴の銭湯に入りたいから手伝ってほしいと頼んでくる。理由は単純で、入ったことがないから入ってみたい、というものだった。
少女はナギサと名乗り、とても明るく見えた。混浴の銭湯に入るだけでなく、主人公をあちこちへ引っ張り、美食を味わい、新しいことに挑戦する。海辺へ景色を見に行ったり、島へリゾートに行ったり。何か不思議な魔力でもあるのか、主人公は彼女に引っ張られるままだった。他人なのに、二人はまるで恋人のようにデートのようなことを重ね、最後には本当に恋人のように、愛し合うことまでしてしまう。
ところが、ナギサと一発やって眠りから覚めると、彼女はいつの間にか起き上がってベランダへ出ていた。主人公に感謝を告げ、自分は十悪不赦の殺人犯だと明かし、最後の願いは叶ったと言い残して、そのまま飛び降りる。下の階に激しく落下し、血の海に倒れた。
物語の始まりは、すでに学校をサボっている主人公・宵宮梯子が、家出の途中で街の廃墟に迷い込み、そこで片翼だけの天使と出会うところから始まる。天使はその羽で主人公に不思議な力を与え、羽の回収に協力してほしいと頼み、特殊な能力を秘めた羽を一枚手渡す。ただし、羽を返した時には関連する記憶を失うという条件付きで。
2016年ごろだったかな。まだGoogle+が生きていた頃で、とにかく表現欲が強くて、何か書きたくて仕方なかった。Google+のあるコミュニティにかなり熱心に参加していて、そこで「三題噺」みたいなのをやっていた。関連する語としない語を三つ渡されて、それで話を書けというやつ。
それから、めちゃくちゃ凄い小説を連載で書こうと思った。当時はまだ中二病っぽい発想もあったし、ギャルゲーをやりすぎていたせいで、頭に浮かぶ話は自然とギャルゲー化していた。考えていたのは、皮肉な男主と女主が学校で繰り広げる話。学校で生徒が不審な死を遂げる。でも最後にはその生徒たちは全員自殺だったと分かる。黒幕は普段は可愛くて明るくて人畜無害に見える女主角で、彼女には知られていない暗いもう一つの顔がある。女主角は隠れた身分でインターネットを通じて学校の生徒たちを惑わし、心の闇を引き出して、自殺や相互の傷害へと導く。ただ楽しむためだけに。自分は完璧に身分を隠し、直接殺していないから責任を問われない、みたいな。男主角は友人の死をずっと調べていて、女主角は身分を隠して男主角と一緒に調べる。最終ボスはすぐ隣にいる、という感じ。
今思うとこの話は本当に中二病全開で、いろいろと未熟で幼稚だ。それでもこの題材が悪いとは今でも思わないし、むしろずっと書けると思っている。いわゆる「悪魔の囁き」は本当に人を死へと導けると信じているから。現代社会は誰もが大きなストレスを抱えていて、いろんな苦しみを抱えている。ちょっとしたことで追い詰められてしまうのもよくあることだ。
でも、話したいのはその物語そのものじゃない。最近気づいたんだ。昔書きたかったこの話を、本当に誰かが書いて、ゲームにしていた……それがSteamでちょっと話題になった『距離男主自殺還有七天』だ。