Asa Project
かつてAsa Projectは中国語圏のコミュニティで「顔芸社」と呼ばれていた。理由はキャラのあの話題になった顔芸表情。そして節操のないお笑い恋愛劇、その頂点が『恋愛0キロメートル』だ。
だがAsa Project自身はどうやらその評価に満足していなかったらしく、以降の作品ではあの『間接恋愛』を除いて、少しずつ「顔芸」の比率を下げていった。最初は全キャラにあったのが、次は一人だけになり、その後は……ほとんど顔芸を見かけなくなった。俺個人としては、Asa Projectは「恋愛」をいろんな定義で表現する純愛会社という自己認識なんだと思う。
たとえば一作ごとに新しい「恋愛」の形を考えて、それをタイトルにそのまま書いてくる。間接恋愛、劈腿恋愛、三角恋愛、恋愛争奪、バイト恋愛、脇役恋愛……などなど。もうタイトルに「恋愛」の二文字を先に書いて、後から中身を補ってるんじゃないかとすら思う。
一年ちょっとぶりにAsa Projectの新作が出た。今回のテーマは「王様恋愛」。公式紹介は「主人公は裕福な御曹司で、毎日王様のような生活を送っている」。本作の特徴は「男方から主動的に仕掛ける恋愛」——パッと見は「俺様社長に愛されて」な脚本かと思いきや、ゲームを終えてみると……どうやら全然そういう話じゃなかった。
主人公の緒方伊織は、何もすることがない透明な高校生。退屈でしかも負け組っぽい高校生活を送っていた。ある朝、登校中に道端で野生の酔っ払い女を蹴ってしまう。女の格好は奇妙で、背中に翼、頭には……光輪(LED駆動)。主人公は大した見識もない萧初南なので、そんな姿を見た瞬間こう口走った。「うわ、もしかして天使?」
するとこのLEDを頭に載せた不良女は一瞬固まってから認めてしまい、自分は天使だと言う。今回地上に降りた目的は男主を救うためで、男主に何か願いはないかと聞いてくる。
ここで男主は抑えていた本性をさらけ出す。天使に自分を幸せにしてほしいと。天使は一瞬ポカーン。これって一戦交えろという意味か? その後、言い直して「彼女を作ってリア充になりたい」と言うと、天使はそんなの楽勝じゃんと承諾する。
こうして契約が成立し、この天使はそのまま男主の家に居候して、図々しくもタダ飯を食らう生活を始める。
Asa Projectの新作『コイバナ恋愛』に「地雷」のレッテルが貼られていると聞いて、正直マジかよと思った。
過去の顔芸ネタ満載の作品群と比べれば確かに下り坂だとは思うけど、どう考えても「地雷」とは違うだろ、と。
Asa Projectは昔から「政治的に正しくない」ゲームを作り続けてきたブランドで、とにかく「めちゃくちゃにやる」のが売りだ。男を強制的に女体化させたり、ホモエンドを平気でぶち込んだり、やりたい放題。このブランドのファン層なんてネタを楽しむ連中が中心で、Asa Projectのゲームにはある程度の予測と耐性があるはずなんだよ。そんな連中が彼らのネタでメンタルやられて「地雷」とか言うか? と言いたいわけ。
しかも俺の記憶では、2023年のAsa Project新作『コイバナ恋愛』って「青春群像劇」っぽい設定で、要は「男子と女子がわちゃわちゃ絡む」みたいな話だったはず。タイトルが全てを物語ってる。コイバナは「恋愛に関する話題」、コイバナ恋愛は「恋愛脳の大集合」って感じだろ。こんなんで「地雷」になりようがあるか? 男主角が「青春」の名の下に乱交・妻交換クラブでも作らない限り無理だろ。
だから興味本位でゲームを触ってみた。第一印象は「確かにこれはアカンわ」だったし、なんで「地雷」と言われるのかも分かった。でも本作の品質が低い原因はその「地雷」じゃなくて、別のところにある。
黒鲨宅の愉快な実家には、こんな不文律の風習がある。
男が浮気をしたら、妻は包丁を手に取って男の息子を切り落とす。
冗談だと思うなよ、検索してみろ、こういうニュースはそこら中に転がってるし、しかも少なくない。切り落とされたけど繋ぎ直せた人もいれば、とんでもなく容赦ないケースではそのまま切り落として川に投げ捨てる。
こういうシンプルで乱暴なクソ男の浮気治療法は女性教師も認めていて、彼女はすでに大多数の女性を代表して言った。「クソ男は、切り落とすべき」と。
ちょっと極端かもしれないし、未来のある日、黒鲨宅が送中されて修車代を払わなかったのがバレて切り落とされるかもしれない。でもこのやり方は世間の人民大衆が「複数股」行為を軽蔑している気持ちを表している。なんにせよ、彼女がいるのに他の人を探すのは、あまり道徳的なことじゃない。
Asa Projectの去年の作品はここ数年で一番の出来だったと思う。理由ははっきりしていて、これまでの「バカみたいな恋愛関係の設定」を捨てて、ゲームの中身を「至近距離でのマウント合戦」の肉弾戦に振り切ったからだ。主人公がヒロインの一人を攻略した後でも、敗犬になったはずの別の女の子がずっと出てきて主人公を引っ掛けようとするシーンが普通に見られる。一般的なギャルゲーなら、主人公がルートに入った瞬間に他のヒロインは全員消えるものなのに……
この珍しいマウント合戦のおかげで、去年のAsa Projectにはちょっとした「純愛」っぽさが出た。女の子たちと主人公の愛憎劇というマリオネットな内容に、多くのオタクが久々の「ラブコメ」のフィールを感じたわけで、当然評判も良かった。
だからAsa Projectは自分に合った新しいパターンを見つけたんだろう。少なくとも「間接恋愛」「交換恋愛」「遠距離恋愛」「三角恋愛」とかいうバカバカしいものをやらかしていた頃よりはよっぽどマシだ……そして日本の資本家の醜悪な本性が露わになる。Asa Projectの今年の新作が発表された。『恋愛Xロウイアル』。どういう意味かというと、つまり『恋愛 X Royale』。個人的にはここの「Royale」は完全に「Battle Royale」の省略だと思うので、俺は直訳して『恋愛バトロワ』と呼びたい。
バトロワといえばみんな分かるだろ、PUBGやってるだろ、全員が最後まで戦って勝者は一人だけ。これはもうヒロイン同士が殺し合うまでマウントし合うゲームだと明らかだ。
『プラマイウォーズ』は Asa Project の2015年のゲームだ。実はこのゲーム、Asa Project の作品の中では立ち位置がちょっと微妙で、過渡期というか。おふざけと顔芸を完全に捨てきれてないのに、純愛寄りにもしたいみたいな、そういうノリが漂ってる。
もちろんゲーム自体の姉ルートは悪くないし、俺の印象では Asa Project は珍しい「移植版が良心的なメーカー」で、全年齢向け携帯機に移植されるときは、もともとのサブキャラを昇格させて攻略可能にするだけでなく、新しいキャラのルートまで追加してくれる。しかも新キャラの CV はたいてい「最近ちょっと売れてるアニメ声優」ときてるんだから、誠意しかない。
たとえば:
恋愛0キロメートル PSP版、ヒロイン2人を昇格、ヒロイン2人を追加。CV は阿澄佳奈と田村ゆかり。
一つ飛ばし恋愛 PSV版、ヒロイン2人を追加、CV は佐倉綾音、丹下桜。
そして今回話すゲームがこれだ:
プラマイウォーズV、ヒロイン1人を昇格、ヒロイン1人を追加、CV は洲崎綾。
こういう移植版の誠意を見ていくと、だんだん公式が手抜きになってるのも分かるし、今回のゲームもどんどん手抜きになっていくのが分かるだろ。
ここ数年のAsa Projectは方向性を見失っていたらしい。もともと彼らのゲームは「おバカなノリ」が主体で、ほぼ毎作「顔芸担当」がいた。ところが何を思ったのか、作品はどんどん大人しくなっていき、逆に「純愛を探る」みたいなテーマをやり始めた。以前の『三角恋愛』や『寄宿恋愛』なんかがそうだ。でもこういう作品は、どうにもこっちがムズムズする。普段はヘラヘラして真面目さのかけらもない奴が、急に真面目な顔で話し出すようなもので、なんだそれ?高度なブラックユーモアか何か?
しかもその前のAsa Projectの2作も出来が良くなくて、設定を乱暴に放り投げただけだった。三角関係だったり三角恋、寄宿だったり、本質的にこれといった見どころはなかった。あの中途半端な設定を消しても、たぶん大差ない。おまけにゲームが売りにしていた「顔芸担当」の存在感まで徐々に消されていき、かつて個性のあったブランドがどんどん「埋もれて凡庸」になっていくのが、見ていて痛々しい。
それだけじゃない。Asa Projectのタイトルもどんどん陳腐になっていて、「恋愛」に形容詞をくっつけただけのものを出す。タイトルで堂々と「これは三角関係です」「これは寄宿恋です」なんて書くバカな作品、見たことあるか?『WHITE ALBUM』だってそんな書き方してないぞ?お前らタイトル付けるのが面倒になったのか?
そして2019年、タイトルはさらに露骨になった。「恋愛、借りちゃいました」。見てくれ、見てくれよ、これがまともな「タイトル」に見えるか?これは文だぞ、しかもその中にめちゃくちゃ気まずい句読点まで入ってる。なんなんだ!『僕、満腹』『君、放屁』『彼女、女装した』みたいなタイトルの作品を見たことがあるか?
このゲームは、俺が珍しくタイトルを見ただけでやる気をなくした類のものだった。でもどうにも気になって、結局見てみたら……意外にもなかなか良かった?!
言ってしまえば、タイトルがアホなだけで、少なくとも水準はかつての『恋愛0キロメートル』に一歩近づいた。Asa Projectがようやく自分たちの「転換」をどうやるべきか分かってきたのは嬉しい。
Asa Project。かつて俺が一番愛していたブランドだ。
初めてその会社の作品に触れたとき、俺はASa Projectこそギャルゲー界の王晶と周星馳だと思っていた。
その後のAsa Projectも、どうやら自分の進むべき方向を見つけたようで、それが顔芸+ギャグだった。しばらくは良い作品も出て、『ひとつ飛ばし恋愛』の頃にはパロディと悪ノリが絶頂に達していた。最初に遊んだときは正直「ビビった」し、力みすぎだとも思った。ところが数年後にあのゲームを再び触ってみて、あれこそがAsa Projectの頂点だったと気づいた。
頂点と言えば、つまりその後の作品はどれも前作以下ということで……。
『プラマイウォーズ』はかろうじてスタイルとテンポを保っていた。だが、あの意味不明な『スキとスキとでサンカク恋愛』を経て、俺は痛感した。Asa Projectは迷走している、と。
どうやら元の悪ノリ路線を捨てて、純愛路線に走り始めたらしい。同時に女の子の恥じらいや可愛さを前面に出そうとする。でも、あの「悪ノリネタ」を完全に捨てる気もない。
その結果が妙なことになっていて、純愛をやるなら徹底的に純にして、ヒロインに下ネタを吐かせるのはやめるべきだ。悪ノリをやるなら、ボケとツッコミの設定を用意して、キャラ同士に化学反応を起こさせるべきだ。
だが残念ながら、Asa Projectはゲーム内の「劇のエンジン」を一人、いや半分にまで削ってしまった。しかもだんだん端に追いやって、プレイヤーに「これはAsa Projectのゲームだぞ」と思い出させるマスコットに成り下がらせている。それ以外は何の役にも立たない……。
ゲームにはツンデレで恥ずかしがる萌えキャラがどんどん増えていく。しかも分かるだろ、Asa Projectの絵師の実力はあんなものだ。一目見て勃起するレベルには全然届かない。だからゲームはどんどんおかしくなり、どんどんつまらなくなる。ギャグもなければ恋愛の感じもない。皮肉なことに、同じHOOKSOFT傘下のブランドなのに、Asa Projectの出来はsmeeにも劣る。向こうはネタがどんどん良くなり、雰囲気もどんどん軽くなり、恋愛パートもちゃんとある。なのにAsa Projectは四不像、居心地の悪さが半端ない……。
そんな気まずい気持ちのまま、俺たちはAsa Projectの新作『かりぐらし恋愛』を目にした。
Asa Project 、かつてはヤバかった会社。
この会社はたぶん Hook の系列で、『恋愛0キロメートル』で自分たちの特色を打ち出し、その後『ひとつ飛ばし恋愛』や『プラマイウォーズ』でそのスタイルを続けてきた……そして今年、新作『スキとスキとでサンカク恋愛』を出した。
この新作の話をする前に、まずは Asa Project のいくつかの作品がどう進化してきたかを話そう……
小学生の頃、家にVCDのプレーヤーが買われた。
そのプレーヤーの名前はもう覚えていないが、買ったときに海賊版のVCDが山ほどおまけで付いてきた。
父も「これを買えば家で大迫力の映画が見られる」という気持ちで買ったらしく、付いてきたディスクはどれもこれも『Mission Impossible』みたいな大層な映画ばかりで、俺たちはさっそくその大層な機械で半日ほど『Mission Impossible』を見ていた。
ところが途中で父も俺もこの映画を受け付けられなくなった。内容が悪いというより……とにかく面白くなかった。
それから長いことそのプレーヤーは埃をかぶったままで、見るものがなかった。