Fandisk
今さらだが、これまでずっと見下していたあの八月社の作品『千の刃濤、桃花染の皇姫』が、実はめちゃくちゃヤバい作品だったと認めざるを得ない。
どこがヤバいのか。設定がファンタジーなのに、妙にリアルなところだ。
俺は最初、こうツッコんだ。「片方が神権封建君主制で、もう片方が共和制、しかも両者が平和に共存していて、君主制国家の上層部の子供が共和国の学校に通えるなんて、世界のどこにあるんだよ? ふざけんなって話だろ!」
もちろん、今はそうは思わない。読者もそう思わないはずだ。この世界には確かにそういう構図が存在する。
バタフライシーカーというゲームが今年の初めに発売されて、じゃあ下半期には、バタフライシーカーのファンディスクを名乗る『バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~』が出たわけだ。
普通、本編がそこそこ売れたらFDが出るし、本編がイマイチでもFDが出たりする。エロゲー制作はそこまでコストが高いわけじゃないから、声優がちょっと大変なだけで、あとはコピペみたいなもんだ。金になるなら出さない手はない。バタフライシーカーのブランドの他の作品を見る限り……(そう、あの景の海のアペイリアのことだ)、FDってのは大体ただの小芝居で、本筋とはあんまり関係なくて、質も本編以下。本編で攻略できなかったキャラの話を入れてくるか、ただの中身のない話か……
要するに、金稼ぎの作品で、売ってるのは思い入れだけ。期待する方がおかしい。
ところが、この『バタフライシーカー ~カオス・ナイトメア~』はマジで驚かせてくれた。
『景の海のアペイリア』は個人的にかなり推せる。驚きがあるし、新鮮だ。ただ残念なことに、俺がここまで持ち上げたゲームなのに、去年の売上はぱっとしなかったらしい。とあるゲームのFDにも負けてる始末だ。
それでも『景の海のアペイリア』は続編を発表した。とはいえ続編と言いつつ、実質FDなのはタイトルとパッケージを見れば一目瞭然だ:
『景の海のアペイリア ~カサブランカの騎士~』、接尾辞は「カサブランカの騎士」。
普通、あるゲームのFanDiskといえば、本編キャラそれぞれの後日談に、本編でルートがなかったキャラの新規ルートを足したもの、大体そんなところだ。俺も最初は『景の海のアペイリア ~カサブランカの騎士~』がそういう作品だと思っていた。何せパッケージに描かれているのはあの二人の脇役っぽい連中だし。
脇役と言っても完全に脇役というわけではない。本編でも主人公と絡みの多いサブキャラだし、一人はもう一人のヒロインであるましろと縁のある看護師のお姉さんだ。ただゲームの仮想世界の中では、二人とも女騎士なだけ。
だが実際にプレイしてみると、これはFandiskというよりAppend diskと呼ぶべきなんじゃないか?
『ノラと皇女と野良猫ハート』については、俺の評価はかなり高い。たとえアニメ版であってもだ。
脚本のはとが話のテンポを作る能力について疑ったことは一度もないし、このはとは本当に頭がいいと思っている。特にアニメ版で出した成果は、最小のコストで最大の効果を上げていた。
で、すぐに『ノラと皇女と野良猫ハート2』が来た。スタッフも元のままで、相変わらずの原液そのまま。どの面を見ても、一作目の肩に乗って一作目の栄光を再現できそうに見える。超展開なんて要らない、一作目のパターンをもう一回コピーすればほぼ安泰!
……安泰だったか? 俺はそうは思わない。
『ワガママハイスペック』は昨年なかなかの成功を収めた作品で、ショートアニメまで出た。しかもアニメの品質はとある皇女流浪猫よりずっとマシだった。後者はもう金が尽きたらしい。ゲームが売れれば当然続編だ。
というわけでまどそふとが一年近く温めていたのが『ワガママハイスペックOC』である。
最初は続編だと思った。まどそふと自身も続編と書いていた気がする。この「続編」では、本編で攻略不可だったクラス委員長・四月一日奏恋、主人公の担当女編集者・鷹司千歳、そして主人公のクラスの女教師・岩隈縁が攻略対象に昇格。もちろん元のヒロインたちも攻略可能だ……
そして体験版は出さず、いきなり製品版。
これはもしやFDでは……と思った。価格を見ると1万円近い。そんな露骨なことはないだろう。
起動してみて、うわ……マジでFDだった……
『タユタマ2 -you’re the only one-』は去年出たゲームで、個人的にはかなり良いと思ってる。
どこが良いかって? 毒がないからだ。
そう、ハードルは低いのにこれがなかなかできてない。ざっと見渡しても、ゲームどころかアニメですら、余計なストレスをくれない作品はごくわずか。唐突に三角関係で胃薬を渡してきたり、すぐ妹を虐めて胸を痛ませてきたり、はたまたループだのタイムスリップだのの超展開で吹き出させてきたり。だからこそ、「人間」と「太転依」がどうやって仲良くやっていくかをひたすら描く、これ以上ないくらいの正能量ゲーム『タユタマ2』は業界の清風なのだ。
Steamで出てから売れ行きは微妙だし、値段は値上げ後の2Bお姉さんの4分の1に届く勢いだけど、現実なんてそんなもんだろ。地味な正能量コンテンツは刺激が足りなくて、ひねくれた死んだオタクの注目を集められない。お尻だけがすべての売上の源泉なのだ……
待ちに待った~待ちに待った~春節が来て、アストラエアの白き永遠のFDがついに発売された!
アストラエアの白き永遠はたぶん俺が初期にやった生肉ゲーの一つで、かなり強い印象を残してくれた。一番の印象は三つ:
音楽!演出!そして新田恵海!
しかし吉住陽菜の引退で、アストラエアの白き永遠の続編は当分お預け状態。だがFAVORITEが続編で稼ぐチャンスを逃すわけもなく、ほどなくしてCVを変えたアストラエアの白き永遠のFD、つまりアストラエアの白き永遠 Finale -白き星の夢-が出た。
先日、エロゲー業界を自称するブログに書いてあった小話を読んで、なかなか興味深い言葉を見つけた:
つまりシナリオとは発売後に作品を支える要素であり、昔から初動の売り上げにおいてはイラストの方が重要であった。
(ゲームの初動売上は主にキャラデザと絵柄で決まる。シナリオなんてのは発売後に作品を支える要素の一つに過ぎない)
さらに面白い話もあった:
だから打ち合わせでは「キャラとイチャイチャしていれば話の中身なんてなくていい」と本当に言われるし、「○○先生に原画を担当してもらえる時点で売り上げは確保できているから、シナリオなんてクソにならない限りどうでもいい」とさえ言われてしまったりする。
(だから打ち合わせでは「キャラとイチャイチャしてれば話の中身なんてなくていい」と本当に言われるし、「○○先生に原画を担当してもらえる時点で売上は確保できてるから、シナリオなんてクソにならない限りどうでもいい」とさえ言われてしまう)
もちろん、これらよりもっと現実的な話もある:
ゲームの傾向も変わってきていて、2004年頃は「エロなんかいらねぇシナリオの質が重要」なんて一部で言われていたりもしたが、今企画会議でそんなことを言おうものなら袋叩きにされる。 理由は簡単で、シナリオを重視した作品よりもキャラクター性を重視した作品の方がグッズの売り上げがいいからである。
(ゲームの傾向も変わってきていて、2004年頃は「エロなんかいらねぇ、シナリオの質が重要」なんて一部で言われていたが、今企画会議でそんなことを言おうものなら袋叩きにされる。理由は簡単で、シナリオを重視した作品よりもキャラクター性を重視した作品の方がグッズの売上がいいからだ)
あ…………要するにこれが現実ってこと?
11eyes: Resona Forma は 11eyes のファンディスク。実はこのゲーム、かなり前にやったことがあって、そのときは草壁美鈴と橘菊里のルートだけ通した。当時は不完全な中国語翻訳版だったし、自分も日本語が分からなかったから、他の内容は諦めるしかなかった。で、今になって拾い直してみたら、翻訳されてる範囲が増えてるし、自分にも「連蒙帯猜」レベルだけど日本語読解力がちょっとついたので、進めてみることにした。
個人的に 11eyes にはかなり思い入れがある。なにせこれ、自分が初めてプレイした、グロい血しぶきと異世界転移モノの魔幻バトル要素を備えたギャルゲーだからだ。それまでは純粋な恋愛もの、しかも萌え系ばかりだった。それに 11eyes はシナリオの設定と構成に独自の工夫がかなりあると思う。バトルの描写もそうだし、豊富な魔幻的記述——剣術に魔法、後には科学魔法、さらに体術戦闘まで、基本的に全部揃っていて、しかもどれも書き崩していない。
今見て一番面白いと思う設定は、Xbox版に同梱された虚空境界編での現代魔術のアイデアだ。サーバー側に魔法詠唱コードを保存しておいて、魔術師は携帯でネットに繋いで遠隔から呪術をロードして発動する。魔法同士の対抗にはビッグデータによる魔法属性解析まであって、ネットワーク層での攻防や反制も絡む。今でも、こんなに面白い設定のバトルは他に見たことがない。
「友と明日の為に」が 11eyes のテーマ。友と明日のために——11eyes がそれなりに人気だったからこそ、ファンディスクが出るのも当然の流れだ。ファンディスクの名前は Resona Forma。ラテン語で、おそらく Resonating Form、つまり「共鳴形態」あるいは「共鳴方式」と理解していい。劫の眼とその持ち主の間のさまざまな共鳴を暗に指すし、このゲームがさまざまな可能性を提示するIF、Before、After構造のシナリオだということも示している。