ギャルゲー
Navelという会社はかつて「Navel Honeybell」という別ブランドを立ち上げていた。設定だけはやたら壮大で、ちょっとロマンチックな雰囲気のゲームを専門に出すブランドだ。しかも一番アホらしいのは、そのゲームを全部俺が遊んでいたことだ。『飛翔する羊と真夏の花』だの、『Magical Dear』だの。で、これらのゲームには共通点がある。
設定がやたら面白くて、設定を見ただけで遊びたくなる 絵柄はそこそこ。萌え系路線で、とにかく人を惹きつける 序盤のシナリオが妙にスケール大きくて、この先の展開も絶対面白いと感じさせる 音楽がやたら良い。しかもどれも西又葵が関わっている 中盤から物語が崩壊し、最後は打ち切り そう、この二本とも打ち切りなのだ。最初はあんなに設定が魅力的だったのに、最後には見事なまでの打ち切りエンドをくらわされる。意味不明すぎて、人生を疑いたくなるレベルで。
ところが面白いことに、Navel Honeybellというブランドはすぐに消えた。潰れたのだ。だがNavel本体は潰れず、ロボット設定のゲームを一本売ったあと、Citrusという名前のブランドがひょっこり現れた。正直このブランドには最初気づかなかったが、そのデビュー作を見れば親会社がどこかは誰だって分かる。
で、今回の『保健室のセンセーとシャボン玉中毒の助手』はこのCitrusの第二作目にあたる。価格から見ると短そうなのに、遊んでみるとやたら長く感じる。そしてクリアしたあとに残ったのは、消えにくい後悔の念だった。
その「後悔」が何なのか、順を追って話していこう。
Sonoraという会社は、あの有名な金儲け企業CUFFSの系列だ。前にも書いたけど……CUFFSのゲームはブランドをいくつも分けていても基本は同じノリで、でもSonoraという別ブランドで出しているのはちょっと違うところがある……
Sonoraのゲームにはひとつの世界観が作られている。
つまり何かというと、Sonoraから出た3本のゲームが同じ世界観の物語になっていて、別のゲームのキャラ同士が相互に顔を出すのが見られるわけだ。なんか妙に馴染みがある感じがする。
この手口、やっぱりちょっと効くんだよな。前の作品をやったあと、次の作品で前作のヒロインが顔を出して参加してくれたりすると、妙に親近感が湧いて、「開発陣はプレイヤーのことをちゃんと考えてくれてるんだな」みたいな錯覚を起こさせる。もちろんもっと大事なのは、ゲームの背景画像を描き直さなくていい、使い回せる、また金が浮く!
というわけで今回話すのはSonoraの新作、『響野さん家はエロゲ屋さん!』だ。
Asa Projectの去年の作品はここ数年で一番の出来だったと思う。理由ははっきりしていて、これまでの「バカみたいな恋愛関係の設定」を捨てて、ゲームの中身を「至近距離でのマウント合戦」の肉弾戦に振り切ったからだ。主人公がヒロインの一人を攻略した後でも、敗犬になったはずの別の女の子がずっと出てきて主人公を引っ掛けようとするシーンが普通に見られる。一般的なギャルゲーなら、主人公がルートに入った瞬間に他のヒロインは全員消えるものなのに……
この珍しいマウント合戦のおかげで、去年のAsa Projectにはちょっとした「純愛」っぽさが出た。女の子たちと主人公の愛憎劇というマリオネットな内容に、多くのオタクが久々の「ラブコメ」のフィールを感じたわけで、当然評判も良かった。
だからAsa Projectは自分に合った新しいパターンを見つけたんだろう。少なくとも「間接恋愛」「交換恋愛」「遠距離恋愛」「三角恋愛」とかいうバカバカしいものをやらかしていた頃よりはよっぽどマシだ……そして日本の資本家の醜悪な本性が露わになる。Asa Projectの今年の新作が発表された。『恋愛Xロウイアル』。どういう意味かというと、つまり『恋愛 X Royale』。個人的にはここの「Royale」は完全に「Battle Royale」の省略だと思うので、俺は直訳して『恋愛バトロワ』と呼びたい。
バトロワといえばみんな分かるだろ、PUBGやってるだろ、全員が最後まで戦って勝者は一人だけ。これはもうヒロイン同士が殺し合うまでマウントし合うゲームだと明らかだ。
『さくらの雲*スカアレットの恋』は発売前からかなり注目していた。なにせ「キャベツ」前作があまりにもクソすぎたからだ。
シナリオは冬茜トム。いくつもの Lump of Sugar とキャベツのストーリー重視作品に関わっていて、今回の捆枝とのタッグも初めてではない。
ゲームが最初に発表されたときの設定にはちょっと面食らった。主人公が100年前の日本にタイムスリップして、そこから未来に帰る方法を探すという。
完全に起点文学のレベルで、しかもかなり質の悪いやつだ。
シナリオへの信頼を頼りに、それでもゲームを開いて、クリアまでかなり時間がかかった。家の用事が忙しかったのもあるし、このゲームの序盤から中盤がとにかく退屈だったのもある。ただ最終章はなかなか面白くて、しかもテンポがよく、前半のだらだらした冗談の顛末をあっという間に語りきってくれた。
日本人はこれを「伏線回収」と呼ぶ。
まあ、そういうことにしておこう。それじゃあ、このゲームについて詳しく話していく。
『まいてつ』というゲームは2016年の初頭に発売されたので、もう5年近く経っている。
このゲームがまさか4年以上前の作品だとは想像しにくい。当時このゲームに抱いた感想は「まあまあ」といったところで、制作面はかなり良心的に見えたけれど、シナリオについては一言では言い表せない微妙さを感じた。
どうにも一言では言い表せない。ゲームは「架空の世界」なのに、現実世界を指すのに同音字や象形文字をたくさん使っている。しかも「すべては蒸気機関車のノスタルジーへ寄せる」方向性だ。
どういう「ノスタルジー」なのかというと、作中には「新エネ会社」が設立されていて、それが悪役として設定されていたのを覚えている。新エネ会社は明らかに汚染問題を抱えているのに、しかも「邪悪」にも今の「蒸気機関車」を廃止しようとしていた。最終的に物語は「蒸気機関車」が本体の神様の加護を受けて、観光面ではまだまだ現役でやっていけるという展開になり、街の「新エネ事業」はそのまま頓挫してしまう。
正直、すごく疑問なんだが、新エネルギーが旧エネルギーに取って代わるのは当然のことのはずで、それがなんでこんなに悲壮な問題になるんだ?むしろ少し政治的なレベルにまで持ち上がってる気がするんだが?
それに、新能源には水質汚染の問題があるって言うなら、蒸気機関車には大気汚染や環境汚染の問題がないって言うのか?
しかもゲームは「新エネルギー」の邪悪さを際立たせるため、めちゃくちゃ笑える市長ルートと妹ルートを用意していて、新エネルギー派閥に対抗するためとはいえ、町の住民全員がより遅い蒸気機関車を選んで新エネルギーを拒否するみたいな話になっていて、もう笑うしかなかった。
どことなく「停電になっても原発は反対だ」という感じがある。
新島夕がまた新作を出した。下半期に突然、Key傘下に新ブランドGlovetyを立ち上げると発表し、以前『恋×シンアイ彼女』で組んだきみしま青、志水マサトシとタッグを組んで、ブランド第一作(そしておそらく最後の一作)『アインシュタインより愛を込めて』を発売する準備を進めている。
アインシュタインより愛を込めて、つまり From Einstein With Love ってことだ。でもこのゲームの英語サブタイトルはそれじゃなくて、The only source of knowledge is experience. なんだよね。「理論は実践から」みたいな意味で、しかもこの英文はアインシュタインの名言 Information is not knowledge. の続きっぽい感じもある。
ともかく、新島夕がまた来た。しかもオタク連中がこぞって愛するきみしま青を連れて、この文芸臭プンプンのタイトルで。阿呆なオタクどもは早くも大興奮、体験版すら出てないのに「聖地巡礼」だのなんだのと気が早い。そして公開されてるたった一枚のポスターからあれこれ要素を分析して、新島夕がどんな話を書くのか予想し始めた。ヒロインの「高IQ」設定と絡めて、「高IQ低EQな奴が恋に目覚める話なんじゃね?」とか「理系男女が恋に落ちてそれを証明しようとする展開?」とか、勝手に脳内補完しては勝手に感動してやがる。発売前からここまで自己陶酔できるのは、柚子厨以外じゃお目にかかれない。おかげで俺のこのゲームへの期待値は下がった。
オタクになりたての頃、俺には妙な「優越感」があった。
どこから来たのか自分でも分からないが、なぜか他人より一段上にいるような感覚。まるで二次元こそが人生の最終目標で、二次元を理解しない周りの連中はみんな無為に生きる歩く屍だ、と。白黒の世界の中で、二次元だけが俺をカラーにしてくれる——そんなふうに思っていた。
だから堂々とLINEのアイコンを萌えキャラに変えたし、PCの壁紙も巨乳のお姉ちゃんにした。周りの奇異な視線も、陰口も、むしろ俺を誇らしくさせた。
「二次元が好きな奴は、みんな友達だ。」
当時は自分が最高にイカしてると思っていた。まるで世界が酔っていて俺だけが醒めている、そんな気分だった。
1年以上も発売延期した「カゴの鳥」
Cabbit。Skyfish傘下の、俺がなかなか面白いと思う会社だ。一連の「サスペンス系」ゲームを出していて、最初の『翠の海』、後の『空の花』、それから『箱庭ロジック』なんかがある。設定はいつも面白くて、最初から謎だらけだが、最後にはなかなか良い結末が用意されている。Cabbitにとって最大の特徴は実は「サスペンス」なんかじゃなくて、「サスペンス」の裏にある「恐怖」を容赦なく見せることだ。過去作では血みどろのシーンや、ヒロインが壊れていく設定がよく出てきて、霧に包まれたゲームの筋書きと相まって、いつも大きな衝撃を与えてくれる。
Cabbitの裏方プロデューサーはたぶん御厨みくりだと思う。彼はこの会社に所属していないが、過去作には全部関わっていて、しかも多くは「企画」を担当している。御厨みくりのスタイルは俺もよく分かっていない。大手の作品にも協力参加しているが、目立った個人の特色は見えない。ただCabbitの過去作と比べれば、少なくとも彼なりに実力はあるんだろうと推測できる。
そうして2年近い沈黙を経て、Cabbitは昨年新作『鍵を隠したカゴのトリ』を発表、発売日は2019年8月30日と決まった。
そして思いもよらなかったのは、この(クソ)ゲームがまさかの1年も延期したことだ。途中でいろんな原因があって、最初はゲームが完成していなかったのかもしれない。その後年末には新型コロナにぶつかり、プロデューサーが入院して病気になったという話まで出た。とにかく延ばしに延ばし、飛ばしに飛ばし……
19年08月30日⇒10月25日⇒12月20日⇒20年02月28日⇒04月24日⇒6月26日⇒8月28日
そして1年後の2020年9月25日、このゲームはついに発売された!
Pulltopはどこかの地方自治体から金でももらったのか、やたら「観光PRシリーズ」とでも言うべきゲームを出している。ストーリーは軽くて甘く、そして何より全年齢向けなのがポイントだ。
昨年『空と海が、ふれあう彼方』があったじゃないか。それが今年、まさかの続編『あの日の旅人、ふれあう未来』である。予想通り、同じ世界観、同じ制作陣、そして同じキャラまで登場する。このゲーム、発売前は完全に空気だった。覚えているのは、ある日Pulltopが出した声明だ。「新型コロナの影響により『あの日の旅人、ふれあう未来』の発売を延期します」という内容だった。
その声明を見た全員がポカーンとした。驚いたのは発売延期そのものではなく、別の点である。
Pulltopはいつからこのゲームを出すことになってたんだ?
存在すら知らなかったんですけど!
しかも延期を発表した時点で、このゲームの公式サイトすらまともに出来ていなかった。その後、このゲームのシナリオライターがATRIの宣伝ついでにこのゲームの宣伝もしてくれたからまだマシだったが、そうでもなければ本当に誰も気にしなかっただろう。
ともあれ、無事に発売はされた。前作の「小笠原諸島でダイビング」という話はなかなか良かった。では今回の新作はどうなのか。
2020年は世界的に散々な年だった。コロナのせいで多くの産業が打撃を受け、日本のエロゲー業界も例外じゃなかった。
「例外じゃない」と言ったのは、エロゲー業界は理論上コロナの影響を受けないはずだからだ。要はソフトの販売だし、開発はオンラインで協力できる、販売はオンラインショップでできる、客層はオタクばかりで外に出たがらない。どう見てもエロゲーは影響を受けないはず……だが、実際のエロゲー市場はそうじゃなかった。
エロゲーの収益は初回出荷の売上に依存していて、その初回出荷はゲームの質じゃなく、特典が売上を引っ張る構造になっている……
特典は当然、各販売店との連動が必要で、つまりは結局オフライン頼みだ。
2020年にもなって、ソフトの販売がオフラインに依存している。こんな状況は日本くらいだろう。
ただSaga Planetsは資金に困っていないようだった。前作『金恋』でかなりの富を築いていて、売れ行きも良かったのは明らかだ。しかもSaga PlanetsはKeyの親会社であるVisual Artsから離れて独立したという噂まである。調子に乗ってるな。今のSaga Planetsは「金に困らない」段階に戻ったんじゃないかと推測している。
前回Saga Planetsが金に困らなかった時、何をやったか覚えてるか?そう、あの懐かしい流れが帰ってきた!
前回は『カルマルカ』を世に出した。今回は『金恋』が好調だったのを見て、『かけぬけ★青春スパーキング!』を作ったってわけだ。
- «
- 1
- ...
- 12
- 13
- 14
- ...
- 45
- »